エスプレッソ・レポート(5)「カプチーノとカフェラテの違い」

レオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港内バールのカプチーノ

カプチーノとカフェラテの違い

ローマのバールで、エスプレッソと一緒によく注文していたのがカプチーノ。イタリア語の発音は「カップッチーノ」に近く、エスプレッソに泡立てた牛乳を注いだものです。
イタリアでコーヒーといえば、エスプレッソのこと。つまり「コーヒーに泡立て牛乳を注いだもの」という感じですね。

ちなみにエスプレッソに泡立ててない牛乳を注いだのが、カフェラテ(イタリアでの発音はカッフェラッテが近いです)。ラッテは牛乳という意味なので、まさにイタリア版「コーヒー牛乳」ですね。
カプチーノとカフェラテの違いは、ミルクを泡立てたか、泡立ててないか・・・だけでした。口当たりは、泡が無いのでさっぱりした感じになります。
なお、カフェラテがメニューに無い場合は「泡無しのカプチーノと注文すれば大丈夫!」だそうです。
※カフェラテのコーヒーがエスプレッソ→ドリップになると、カフェオレです(フランス風)。

ここでちょっとまとめてみましょう。
————-
カプチーノ =エスプレッソ+泡立てた牛乳(イタリア)
カフェラテ =エスプレッソ+牛乳(イタリア)
カフェオレ =ドリップコーヒー+牛乳(フランス)

————-

カプチーノは「朝」限定?

カプチーノは、朝に飲むものらしいです。らしい・・・と断言を避けたのは、昼でも夕方でもバールで注文できたからです。日本の某ファストフード店のように「限定!朝メニュー」ではありませんでした。

カプチーノをいつ飲むか知らなかった私は、昼夜を問わず元気に「カップッチーノ!」と注文しておりました。それがどのくらい変なことだったのか、実はよく分かっていません。

バリスタさんは全然気にしていない様子だったので、たぶん大丈夫なのかなと・・・。次イタリアへ行ったら「なぜ昼飲まないの?」と、聞いてみたいと思います。

ところで、日本のカフェで「カフェラテ」を注文すると「カプチーノでは?」と思える飲み物が出てくることがあります。
特にアメリカ出身のシアトル系コーヒー店では、カフェラテでも泡立てた牛乳を使う場合が多いですね。
その内容は、温めただけの牛乳と組み合わせたり、泡立て方が違ったりと、お店によって様々。

とりあえず「カフェラテ=コーヒー(エスプレッソ)牛乳」ですから、どれでも誤りでは無いと思います。
ただ注文する前に、出てくるコーヒーがどういうものか?予め店員さんに聞いておくと安心ですね。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エスプレッソ・レポート(4)「クレマについて」

エスプレッソ表面に浮かぶクレマ。

クレマとは?

私達がカフェでエスプレッソを頼んだときに気にするクレマ(エスプレッソに浮かぶ泡)。その正体は、新鮮なコーヒー豆に含まれる「炭酸ガス」です。
※ドリップで蒸らす時に、新鮮なコーヒー豆だとプクッと膨らみますね?あの膨らみも、そしてコーヒーの香りも、「炭酸ガス」が関係しているのは以前お話しした通りです。

そのクレマは、
「新鮮な豆」を、
「抽出直前にパウダー状」に挽き、さらに
「適正なマシンと抽出技術」があってできる泡、と言えます。

ただし「クレマが厚い=美味」とは限りません。
高品質で新鮮な豆を使えばクレマの厚い美味しいエスプレッソができますが、低品質の豆を使えばクレマがあっても美味しさの追求は難しいです。
また最近では、古い豆でも強制的にクレマを作るエスプレッソマシンが出回っており、残念ながら美味しさの基準とは言えなくなってきているようです。

意外と薄かったクレマ

このクレマが、ローマのバールではどうなんだろう?と大変期待して行ったのですが・・・
意外にも、クレマが薄いエスプレッソを出された方が多かったです。
薄いどころか、コーヒー液が半分くらい見えているエスプレッソも。
(※クレマが厚くて美味しいエスプレッソを出すバールも、少数派ですがありましたので予めご了承下さい。)

クレマの薄さが、エスプレッソマシンの問題か、豆の鮮度の影響か、私が行った時期が悪かったのか、偶然そういうバールにばかり入ってしまったのか?・・・残念ながら、詳細は分かりません。
ただバリスタさん達は、接客態度と同様、クレマの厚さについても「全然気にしない♪」という感じだったのは確かです。

日本では「クレマが大事!」と、強制的にクレマを作る機能付きマシンまで出回っているに、ローマではあまり気にしていないのかぁ…と、少々拍子抜けしました。

日本人は見た目重視?

このとき、ふと紅茶の「ジャンピング」を思い出しました。
「紅茶を抽出する時には、茶葉がポット内で上下(ジャンピング)するのが大事!」と日本で言っているのに、本場英国では全然そんなこと気にしていなかったこと、そして「ジャンピング」と言う言葉自体、本場では使われていなかったことを。
日本では、味わいよりもむしろ「見た目」にこだわってしまう傾向があるのかも知れませんね。

ちなみに、イタリア家庭で親しまれている直火式エスプレッソメーカー(マキネッタ)では、クレマは出来ません。マシンほど圧力がかからないため、泡立たないのでした。
でも、だからと言って味わいが劣るということはありません。マシンとはまた違った、直火式エスプレッソメーカーならではの美味しさを楽しむことができます。

直火式エスプレッソメーカー・イルサ
直火式エスプレッソメーカー

ローマ滞在中、一度だけ直火式のエスプレッソをイタリア人家庭でいただく機会がありました。エスプレッソマシンとはまた違った、素朴な美味しさがとても印象的だったのを覚えています。
また、私が滞在したコンドミニアムにも3種類の直火式エスプレッソメーカーが用意されていて、さらに直火式エスプレッソ専用のガス台まであり驚きました。
小さなキッチンでも、エスプレッソ専用のガス台があるのが一般的のようです。

クレマにこだわっていないからこそ、直火式が「家庭の味わい」として愛され続けているのかな…と思いました。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エスプレッソ・レポート(3)「鮮度と砂糖」

コーヒー豆の鮮度について

残念ながら、新鮮な豆から抽出されたエスプレッソには、あまり出会えませんでした。
持ち帰り用のコーヒー豆も、挽いた状態で販売されているのが普通でしたし、バールは沢山あっても自家焙煎店は見かけませんでした。
※単に、私が行った所が偶然そうだっただけかも知れませんので、予めご了承下さい。

「自宅でミルを使って焙煎豆を挽く、という習慣は殆ど無い」という現地情報(ローマ在住の方)もあり、もしかしたら鮮度は気にしない傾向があるのかな?と思いました。
もちろん日本でも、鮮度を全然気にしない方はいらっしゃいますね。
むしろ、気にする人の方がずっと少ないかも・・・。

ちなみに「缶コーヒー」は売っていませんでした。自動販売機も街中では見かけなかったです。
そういえば1つだけ、ヴァチカン美術館の出口付近にジュースが出てくる販売機があったような・・・でも、コーヒー類は無かったです。
やはり「コーヒー=エスプレッソ」の国なんだなぁ、と思いました。

エスプレッソと砂糖の関係

「新鮮かどうか」は、エスプレッソでは分かりにくいと思います。なぜならエスプレッソには砂糖を必ず入れるため、微妙な味わいの違いが見逃されやすいからです。
さらにミルクをたっぷり入れたら・・・殆ど分からなくなりますね。
もちろん体質的に古いコーヒーが無理な方もいるので、味だけの問題ではありませんが。

ところで、なぜ必ず砂糖を入れるのでしょう?
以前「エスプレッソを無糖で飲むのは、日本人ぐらい」という話を聞いたことがありました。砂糖を入れないでエスプレッソを飲むのは、どうやらとても変なことのようです。
どのくらい変かというと・・・たとえば「砂糖を入れないで飲むココア」や「無糖のチョコレート」はどうでしょう?
無糖のココアやチョコレートに慣れていない方だと、結構辛い味わいになるかと思いますが・・・いかがでしょうか。
きっと、そんな切っても切れない関係なのかな?と思いました。

私も、バールでエスプレッソを飲むときに「やっぱり砂糖を入れるべきだろうな」とは思ったのですが・・・どうしても味を見たかったのでブラックで飲んでいました。
さらに、一人でエスプレッソとカプチーノの両方を注文することも多々あったので、相当変な日本人に見えたと思います。
とりあえず誰にも迷惑はかけていなかったので良いかなと、開き直っておりましたが・・・。

次回は、エスプレッソのクレマについてお話ししたいと思います。
——–
・・・レポート(4)に続く。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エスプレッソ・レポート(2)「バールで注文する時」

国民性の違い?

私は、ローマのバールではいつもカウンターで飲んでいました。テーブル席に比べて価格が半分~3分の1で済む上、バリスタさんの動きがよく見えて楽しいからです。
でも、「日本じゃコレは無いだろうなー」と気になった点がありました。

それは、バリスタさん達がとってもマイペースな場合が多かったことです。
具体的にどういう感じかというと・・・
注文を受けても、自分が今までやっていた作業(皿洗いや整理整頓など)を優先し、その間に他のお客さんと楽しそうに話したりしています。
特に急ぐ様子もなく、一通りの作業が終わるまで抽出には取りかかりません。5分以上待たせても(無視しても)平気。つまりお客さんを待たせることについて「全く気にしていない♪」という感じです。一方お客さんの方も、それを全然気にしていない様子でした。

「バリスタの仕事は、お客さんと楽しくおしゃべりすることも含まれる」と予習はしていたものの・・・
最初の頃はあまりの遅さに「このバリスタさん、私の注文すっかり忘れているのでは?!」とよく不安になりました。
帰る頃には「ま。こんなもんかな。」と思えるようになりましたけど。
日本なら「少々お待ち下さい」「お待たせして申し訳ございません」の言葉が出そうな所ですが、この辺は国民性の違いなんだろうな、と納得しました。

イタリアへ行く前に読んだ本では「受注→抽出→出てくるまで50秒、飲んで5秒、お会計5秒で、合計1分間あれば一連の動作が終了!」と書いてあったのですが・・・
実際にカウンターで注文してみると、上記の通り5分以上かかることも多かったです。
単に私が人気のバールや、混んでいるバールを選んで入ってしまったからかも知れませんね。空いているバールなら、もっと早かったかも?

ちなみに一度も注文を忘れられたことは無かったので、カウンターで待つ時は心配無用です。
バリスタさんの気が向けば(順番さえ回ってくれば)すぐに抽出して持ってきてくれるので、ご安心下さい。
#せっかちな方は要注意。郷に入っては郷に従え
・・・まさに “When in Rome do as the Romans do.”ですね。

受注済みの合図

バリスタさんが数人いるバールだと、受注済みの合図が決まっている場合が多いです。
たとえば、お客さんが出したレシートに手で切り込みを入れて合図としたり、ソーサを先に置いて合図としたりします。

そのソーサの合図で、「ガチャン!」とカウンターに勢いよく置かれた時には、かなりビックリしました。
私が入ったバールでは、そこまで凄くなくても作業がやけにダイナミックなお店が多かったのは確かです。
それは、バールに限らず、ジェラテリア(ジェラートのお店)でも同様でした。

大胆かつ素速く抽出してもらったエスプレッソやカップチーノを恐る恐る飲むと・・・これがまた「美味しい!」ことが多かったです。
気のせいかも知れませんが、ダイナミックなお店ほど美味しかったような?豆の回転が早く、新鮮だからでしょうか??
※ちなみに、ジェラートも最高に美味しかったです。

日本に帰ってきて、改めてサービスのきめ細かさ・心遣いに感動しました。
ただ、どっちが良いかは分からないですね。結局日本の場合は、店員さんが沢山気を遣っている訳ですから、お店側のストレスが少ないマイペースの方が精神衛生上良いのかも・・・と思ったりもしました。

——–
・・・レポート(3)に続く。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エスプレッソ・レポート(1)「値段の違いと飲み頃」

先月、はじめてイタリア(ローマ)に行ってきました。
8月後半ということもあり観光客が多い時期でしたが、とりあえずエスプレッソがどういうものか雰囲気はつかめたと思います。そして、日々私達が提供しているコーヒー豆達が「エスプレッソにも最適だった!」と自信を持つこともできました(これが一番の収穫でした)。
やはり、自分の目で見て確かめるのが大事だなぁ・・・と、づくづく思った次第です。
—–
・・・ということで。
ここでは「コーヒー本」の受け売りは一切せず、私が見たまま、感じたままを何回かに分けてレポートしてみたいと思います。もし本場エスプレッソをよくご存知の方で「レポートの内容は違う!」等ご意見ございましたら、お手数ですがご一報下さい。

飲む場所によって異なる価格

徒歩圏内に古代遺跡がゴロゴロあるローマ市内。順に遺跡を回ると、自然と小さなバール(Bar)があちこちで目に入ります。エスプレッソは、そのバールと呼ばれる喫茶店で飲めるのですが、まず価格の設定が面白いです。

日本のカフェではカウンターでもテーブルでも同じ価格ですが、バールではテーブル席の方が2~3倍高いのが普通です。
例えばエスプレッソなら、カウンターで飲むと0.8~1ユーロ(90円~110円程度、2010年8月現在)、テーブル席で飲むと2~3ユーロ(220円~330円程度)でした。
はっきりと価格が違うので、カウンターは混んでいてもテーブル席はガラガラ・・・ということも多かったです。
※セルフサービスのバールは、カウンターでもテーブル席でも同じ価格のようです。

ちなみに上記の価格は、小さなデミタスカップの半分くらい、約30ccあたりの価格になります。30ccといえば、2~3口で飲めてしまうほどの量なので、初めて飲む方は「これだけっ?!」と驚かれるかも知れませんね。

ゆっくり飲まないエスプレッソ

カウンターで立ち飲みだと、ゆっくりコーヒータイムを楽しめないのでは?と考えた方もいるのではないでしょうか。
実は、エスプレッソは「ゆっくり・少しずつ」飲むものではありません。なぜなら、ゆっくり飲んでいると、どんどん味が劣化していくからです。

新鮮な豆で入れたエスプレッソは、豊かな香りと香ばしさ+独特のまろやかさを堪能できますが、時間の経過に伴い刻々と不味くなってしまいます。
その劣化具合は、「美味しくない」ではなく「なにこれ不味い!」と言いたくなるレベルです。
新鮮な豆でいれたドリップコーヒーなら冷めても「美味しさが落ちた」程度で済みますので、この違いはかなり大きいと思います。

そういう意味では、日本のカフェのようにテーブル席でエスプレッソを飲むより、バリスタに抽出してもらったものをすぐに飲む・・・というカウンター式の方が、理にかなっているなと思いました。

※バリスタ:バールのカウンターに立ち、注文を受けてエスプレッソ等を作り提供する人。
——–
・・・レポート(2)に続く。

きまめや
生豆屋(きまめや)

コーヒーメーカーvsハンドドリップ

ハンドドリップ

安定した味わいが魅力のコーヒーメーカー

コーヒーメーカーは、スイッチひとつで「いつものコーヒー」を作ってくれる優れもの。忙しい朝には、とっても助かりますね。
さて、ここで問題。
機械任せのコーヒーメーカーでは「美味しいコーヒー」を入れることができないのでしょうか?

スイッチひとつで作れるということは、湯温や蒸らし、抽出速度などを工夫することができません。
多少工夫できる機種でも、手でドリップ(ハンドドリップ)するのに比べたら融通がきかないと言えるでしょう。
でもそれが「美味しくないか?」というと、別の問題になります。

まず飲む人にとっての「美味しい」が何を意味するかによって、違ってきます。
「いつでも熱々コーヒー」が飲みたい方なら、コーヒーメーカーで保温できるのが一番ですね。
また「このコーヒーメーカーの味わいがお気に入りで、毎回同じ味わいを楽しみたい」という方にもおすすめです。
珈琲豆と水の分量さえ間違えなければ、「いつものコーヒー」を気軽に飲めるのが魅力ですね。

ハンドドリップだからできること

一方、ハンドドリップだと下記のようなことができます。
(1)焼きたての珈琲豆を購入(または自家焙煎)し、日を追って味わいの変化を楽しめる。
(2)その日の気分や体調、一緒に食べるもの等に合わせて、挽き加減~抽出速度まで変えることができる。
(3)毎日コーヒー豆の鮮度を確かめることができる等々。

普段、上記のようなことを気にしながら抽出している方は「そうそう!」と共感して下さるかと思います。
でも全然気にしていない方は「え~、本当にそんなに違うの?」と疑われるかも知れませんね。

例えば・・・
当店では毎朝&午後の珈琲タイムに、スタッフ達が日替わりで珈琲を入れてくれます。
そのとき、全く同じ豆・器具を使って、別々のスタッフに入れてもらうことがあるのですが・・・予想通り全然違う味わいになります。

挽き加減や豆の量、湯温や湯量、蒸らし時間も同じなのに、一体何が違うのでしょう?
答えは「抽出速度」です。
Aさんは、ゆっくりじっくりとお湯を注ぐので「コクのあるまったりした余韻のある味わい」を作ってくれます。
一方、Bさんは速く注ぐので「あっさりした味わいで、後味スッキリの味わい」を作ってくれます。
どちらも香り豊かで美味しいのですが、抽出速度だけで全然違う味わいになるのが面白いですね。

ちなみに個人的には、コーヒータイムに飲む時はAさんの「コクのある味わい」が好きで、食後に飲む時はBさんの「後味あっさりの味わい」が好きです。
・・・というように、ちょっとした違いで性質の異なる味わいに変わるのがハンドドリップの特徴と言えるでしょう。

一度違いを知ると戻れない

またハンドドリップだと、珈琲の鮮度がよく分かります。
蒸らした時に、どのくらい膨らむか?毎日挽いている方なら、余計はっきりと違いが分かるでしょう。その鮮度によって味わいが違うことを知ると、抽出直前に挽かないと気が済まなくなってしまうかも知れません。
そうなると、私のように旅行にもミル持参・・・という面倒なことになりますので、鮮度が味わいに与える影響については知らない方が良い場合もあります。
これは「ペーパーフィルターの臭いを知ってしまうと、気になって仕方がない!」と同じですね。

でも「新鮮な豆の挽きたての味わい」を、ぜひ皆さまに知って頂きたい!という気持ちは、いつも持っております。それほど、味わいの違いは明らかなので・・・。
ミルが買えない、挽くのが面倒臭い等、いろいろ事情はあるかと思いますが、「とっておきのコーヒータイム」には是非!挽きたての味わいを試して頂きたいと思います。

<参考>
蒸らしで豆を知る
実験!蒸らしの極意
コーヒーの香りと炭酸ガスの関係

きまめや
生豆屋(きまめや)

コーヒーの香りが全然無い?

紙袋に入れて保存すると・・・

自宅焙煎のお客様から「気候によって、焙煎しても全然香りが出ない場合がありますか?」というお問い合わせをいただきました。

気候によって多少焙煎を調整しますが、香りが大きく影響するとは思えません。
また焙煎直後は香りが少ないのは確かですが、当店の良質な生豆を焙煎して「全然香りが無い」のは不思議です。
——————————————–
店長:「本当に、全然香りが無いですか?」
お客様:「はい。」

店長:「失礼ですが、焙煎加減はどのような感じでしょう?」
お客様:「深め中煎り程度で、芯まで火が通っていると思います。」

店長:「何か理由があると思うのですが・・・」
お客様:「明日、届けますので時間があったら見て下さい。」
——————————————–

届けていただいた豆を見た瞬間、全然香りが無い理由が分かりました。
焙煎豆が「紙袋」に入っていたのです。

コーヒー豆は、市販の消臭剤よりも優れた消臭効果を持っています。
つまり、周囲の臭いを吸ってくれる効果が抜群!なのでした。
ですから、紙に入れたら「紙の臭いコーヒー」ができるのは当然ですね。
また紙だと密閉性も無いので、コーヒーの香りもどんどん抜けてしまいます。

では、焙煎直後に香りが感じられなかったのは何故でしょう?
これはあくまで推測ですが、焙煎によってコーヒーの香りが充満し、嗅覚がその香りに慣れてしまっていたのではないかと思われます。

例えば・・・ご来店のお客様から「こんな良い香りに包まれながら仕事できるなんて、いいですね!」と言われることがあります。
でも、私たちの嗅覚は香りに慣れてしまっているので、仕事中はよく分かりません。
そのため店では、朝一番に飲むコーヒーが、一番香り豊かなコーヒー・・・ということになります。
人間の嗅覚というのは、実はあまり頼りにならないものなのでした。


また焙煎直後は、コーヒー豆の性質上香りが少ないのも一因かと思われます。
翌日以降に香りが強くなってくる性質を考慮すると「焙煎直後も、香りが無い!」と思ってしまったのも納得できますね。
——————————————–

お客様に、その旨お伝えしました。
その後「保存方法に気をつけて、香りを楽しんでいます!」とのご感想をいただき安心した次第です。

コーヒーの香りって、本当に繊細で儚いですね。
でもちょっと保存に気を付けるだけで、素晴らしい香りを楽しむことができます。ぜひ下記リンクを参考にして、素敵なコーヒータイムをお楽しみ下さい。

<参考>
焙煎豆の保存方法
生豆の保存方法
コーヒー焙煎豆の飲み頃
コーヒーの香りと嗅覚

きまめや
生豆屋(きまめや)

あの味を求めて(カフェオレ秘話)

本場カフェオレの味を求めて。

本場カフェオレとの出会い

十数年前、フランスのパリに行った時のこと。
貧乏学生だった私は、美術館巡りをするために小さなホテルに泊まりました。朝食付きの格安ホテルです。
フランス語は「ぼんじゅーる」「めるしー」くらいしか言えなかったので、身振り手振りで何とか宿泊手続きをしました。

外食できるほどお金が無かったので、とりあえず買ってきたものを部屋で食べていると、掃除係の人がきて怒り始めました。
「○×△□!」
・・・・とフランス語で、ホウキを振りながら滅茶苦茶怒っています。

いくら怒られても意味がサッパリ分からないのでポカーンと口を開けていると、諦めて部屋から出て行きました。
たぶん「部屋で食べちゃダメじゃない!」と言いたかったのかも知れません。
今となっては、分かりませんが・・・。


翌朝、「昨日怒られたし、何か気まずいな~」と思いならが朝食の席につくと、クロワッサンとカフェオレが運ばれてきました。
「朝ご飯は、これだけ?」と思いつつ、パンをひとくち食べた後カフェオレを飲んでみると・・・

「美味しい!!」

なぜこんなに美味しいの?
何が違うの?
とにかく美味しい!!

全く期待していなかった朝食でしたが、そのカフェオレが生涯忘れられない味わいになったのでした。

あの味を求めて・・・

当時、自分がコーヒー豆屋になるとは夢にも思っていませんでしたので、伝説の味わい(?)も、思い出の一つに収まっていました。
しかし。いざコーヒー豆屋を始めるとなると、どうしても「あの味わい」を再現したくなるものです。

一体、何が違ったのでしょうか?
いろいろと調べたところ、下記のような違いが考えられました。

(1)水が違う(フランスは硬水、日本は軟水が多い)
(2)ミルクが違う
(3)豆が違う(豆の挽き加減が違う?焙煎が違う?)

かなり大雑把な分類で、実際には違うところもあるかと思います。
しかし実験の結果、(3)の焙煎加減だけは譲れないポイントだと確信しました。

なぜなら、実際にごく深煎り豆でカフェオレを作ったところ、近い味わいを再現することができたからです。
まさに伝説のカフェオレ!

伝説のカフェオレのポイントは、やはりパンチの効いた強い苦味のあるコーヒー豆を使うこと。繊細な苦味や微かな酸味は、ミルクの打ち消されてしまいます。
深煎りに適した数種類の豆を使い、フレンチからイタリアンローストの間で焙煎すれば大丈夫です。

そして、挽き加減はいつもより細かめに。濃い味わいになりますが、ミルクと合わせるとちょうど良いコクに変わります。
※当店の豆では、「ヨーロピアンブレンド」が最適です。

さらに硬水を使って抽出すれば、もっと近い味わいになるかも・・・。硬水は軟水よりも苦味が前面に出て、酸味は感じられなくなりますからね。よろしかったらお試し下さい。

伝説を再現したら、また本場のカフェオレが飲みたくなりました。今度は、もっとしっかりフランス語を勉強してから行きたいです。
怒られたら、ちゃんと謝れるように・・・。

有機栽培(無農薬)ヨーロピアンブレンド

きまめや
生豆屋(きまめや)

硬度別に実験「軟水・硬水・超硬水」

ミネラルウォーター

水の硬度別に実験

以前、硬度の違う水(軟水・硬水)によって、コーヒーの味わいがどのように変化するかをレポートしたことがありました。
それに関連してある出版社から「軟水・硬水」の取材依頼がありましたので、先日再度「水の実験」を行いました。

今回の取材で使用した水は、市販ミネラルウォーターで「軟水」「硬水」「超硬水」の3種類。コーヒー豆は、酸味と苦みのバランスがとれた「有機栽培ガテマラ(中煎り)」を使用。
硬度によって、どのように味わいが違うかを比較してみました。

【水の硬度・豆知識】
※硬度とは:水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの量を、これに相当する炭酸カルシウムに換算して数値で表したもの。

※軟水・硬水とは:硬度が高い水を「硬水」、低い水を「軟水」という。

※硬度は水源の種類に大きく影響され、一般的に地下水の方が河川水などに比べて高い。欧米では硬水が殆どだが、日本のように地中での滞留時間や河川延長が短い場合、硬度は低くなる。そのため、国内の水道水は殆ど「軟水~中硬水」である。

※実験で使用したミネラルウォーター
軟水:国産
硬水:フランス産(エビアン evian)
超硬水:フランス産(コントレックス Contrex)
 

実験の結果

苦味:硬水(硬度が高い)ほど、苦味が強く感じられた。
酸味:軟水は適度な酸味があり、硬水(硬度が高い)ほど酸味が消えた。
渋味:軟水は適度な渋味があり、硬水・超硬水はあまり渋味を感じなかった。
風味:軟水(硬度が低い)ほど、複雑な香りやまろやかさが感じられた。
—–
「超硬水」は、硬度1500程度でかなり強烈な苦味を感じました。
もし、何も知らないで飲み比べたら・・・同じ豆を使用したとは、絶対に気付かないでしょう。
「もっと刺激的な苦味を!」という方には、ピッタリの水かも知れませんね。

一方「硬水」は、苦味がきいていて「まろやかさ」が少なかったですが、比較的飲みやすかったです。

そして「軟水」は、いつもの「まろやかで香りとコクがあり、適度な酸味があるガテマラ」と同じでした。
国産のこの味わいに慣れているせいか、取材の方々や当店スタッフ達も「軟水が一番良い」という意見が多かったです。


ミネラルウォーター使用時の注意

まず、選ぶ時には硬度に注意をしましょう。上記の実験結果のように、硬度が違えば味わいも全然違うものになってしまいます。

あとペーパードリップ時に意外と大変なのが、ペーパーフィルターの湯通し(紙の臭い消し)です。
頑張って水にこだわったのに、出来上がったコーヒーが紙臭いと残念ですね。かといって、ミネラルウォーターを臭い消し用に使うのは勿体ないですし・・・。
そういう時は、湯通し用に別途水道水を沸かしておくのがおすすめです。「そんな面倒な事できない!」という方は、湯沸かしのお湯などで湯通しして、少し置くだけでも紙臭さがだいぶ抜けます。
もちろん、ネルなど抽出後の香りに影響を与えにくいものなら問題無いですね。

<参考>
水の実験「軟水・硬水・水道水」
ペーパーフィルターの臭いを消す方法
無漂白と酸素漂白、どちらが良い?(ペーパーフィルター)

きまめや
生豆屋(きまめや)

実験!オーブン焙煎に挑戦

以前から気になっていた「オーブンでコーヒー生豆を焼くこと」。
名づけて「オーブン焙煎」。
なんとなくムラ焼けしそうな気がして躊躇していたら、10年も経ってしまいました。
そして、とうとう「挑戦してみよう!」と思い立ち、自宅のガスオーブンで焙煎してみました。

すると意外にも・・・おいしい!
これならもっと早くやっておけば良かった、と思いました。

焙煎は面倒だけど、焼きたての新鮮なコーヒーを飲んでみたい方、
一度に多めに焼きたい方、
下記の要領で、ぜひ一度お試し下さい。


<オーブン焙煎の方法>

これからご紹介するのは、オーブン温度200℃中煎りコースです。深煎りは途中から210~220℃に変更します。
自宅にあるガスオーブン(大きめ)を使用し、室温は22~24℃でした。

(1)オーブンを200℃に温める。
※温めが足らないと、時間がかかります。

(2)天板に、できるだけ重ならないようにコーヒー生豆(今回は有機栽培コロンビア260g)を並べる。
※生豆同士がくっついても大丈夫です。
生豆を並べる


(3)(2)をオーブンに入れて焼く。

※中煎りで30分が目安です。深め中煎り~ごく深煎りが良い場合は、さらに様子を見ながら焼いて下さい。

10分経過。焙煎特有の甘い香りが漂い、豆が薄茶色になってきます。
10分経過

20分経過。浅めで酸味が強い状態です。
ほろ苦さを前面に出すなら、様子を見ながらさらに焼きましょう。
20分経過

30分経過。20分と殆ど色が変わらないですが、中まで火が通ってきました。かすかな酸味の中煎りがお好きな方は、ここで終了して下さい。
さらに苦みを前面に出すなら、温度を210℃に変更して続けて焼きましょう。
30分経過


40分経過。やや深めの焙煎になりました。
もっと苦くしたい方は、220℃に変更して続けて焼いてみましょう。
40分経過


50分経過。フレンチロースト程度で終了します。
50分経過


(4)
お好みの焙煎加減になったらオーブンから出し、完全に冷めたら手でモミモミして豆の薄皮を外します。
それをザルに入れて、うちわで仰いで薄皮を飛ばせば出来上がり!

写真は、40分焼いて「やや深煎り」にしたコロンビアです。
写真左は、薄皮が付いた状態。写真右は、うちわで仰いで薄皮を飛ばした後の状態。
薄皮付きの、やや深煎りのコロンビア やや深煎りコロンビアの薄皮無しの状態

<ポイント>
●上記の方法は、ガスオーブンを使用した場合の目安です。お使いのオーブンや、室温によっても火の通り方が全く違ってくると思いますので、適当に時間・温度を調整して下さい。
※途中経過では上記の写真を目安にし、色合いが異なる場合は調整してみましょう。
※オーブンによっては、天板の場所によってムラ焼けする場合があります。オーブンの特徴をつかむまでは、こまめに焙煎のすすみ具合をチェックし、焦がしすぎないように注意しましょう。

●焙煎が足らないと、酸味が強い、または青臭く感じることがあります。その場合は、再度オーブンで焼いてみて下さい。

●温度が低いと、さらに時間がかります。高いと、早く終了します。お使いのオーブンでは、どのくらいの時間をかけるとベストか、色々と研究をしてみましょう。
※自宅オーブンで180℃だと、中煎りまでに1時間以上かかりました・・・。

●(4)の手でモミモミ・・・・は、シジミを水洗いする要領でやってみて下さい。簡単に豆表面の薄皮がはがれます。
なお、うちわで仰ぐと周囲が薄皮で散らかりますので、予めご了承下さい。
※薄皮が気にならない方は、(4)はやらなくてもOKです。

●部屋中に、焙煎の香り(臭い?)が充満します。しばらく独特の香りが漂い続けますので、予めご了承下さい。
※ガスオーブンをご使用の際は、必ず換気をしましょう。

●生豆は、カビ豆などの欠点豆・異物があったら焙煎前に取り除いておいて下さい。
※当店の生豆でしたら、カビ豆などの欠点豆・異物等を除去してから袋詰めされていますので、そのままご使用いただけます!

—-
オーブンや室温によって火の通り方が全然違うと思いますので、自分好みの味わいを研究してみるのも楽しいですね。
ぜひお試し下さい。

※生豆屋では、生豆でご注文いただくと3割増量サービスしております!詳しい生豆のご注文方法は、こちら

きまめや
生豆屋(きまめや)