有機JAS法から学ぶこと

大変な日々の作業

当店では有機JAS法が施行される以前から、有機栽培(オーガニック)コーヒー豆を専門に販売しておりました。
当時は有機JASマークというものも無く、生産地で有機認証を受けたコーヒーであれば「有機栽培(オーガニック)」をうたうことができたのです。
しかし、有機JAS法という法律によって「マークを貼らないと、有機栽培(オーガニック)コーヒーって言っちゃダメ!」ということになりました。そこで当店ではいち早く「有機JAS認証」を取得し、堂々と「有機栽培コーヒー豆専門店」と名乗れるようなりました。

この認証は、取得後も検査や管理が大変ですが、実は日々有機JASマークを添付・処理する方がもっと大変な作業になります。
マークを貼るのこと自体が大変、という訳ではありません。マークを貼るためには、付随してやることが沢山あるという意味です。
有機JASマークについてはこちら

日々の作業をすべてここに書くと、とても長い文章になるので省略させていただきます。でも、有機JASを真面目に導入したおかげで、良かったことを1つご紹介したいと思います。

入荷から配送まで

皆さんのお手元に届く、当店のコーヒー豆達。
何気なく袋詰めされているようですが・・・。

実は、いつどこから入荷した豆で、誰が焙煎して、誰が欠点豆を除去+袋詰め+シール添付して、誰が発送用書類を作って、誰が梱包作業をしたか?が全部記録で残っています。
つまり、すべての作業点で責任者が存在するということです。
だから、もしAさんから「○○を○グラム注文したけど、ちょっと・・・」とクレームがあった場合、すぐに誰が担当した豆で、どの時点で問題が派生したかが分かるようになっています。

こんなにしつこく記録しているのは、元々は有機JAS法のためでした。 でも、結果として私達も責任をもって作業ができるようになり、今ではそれが自分達のコーヒー豆への自信につながっているように思います。

有機JAS導入を振り返って

有機JASマークを添付するようになって作業量は増えましたが、コーヒー豆の値上げはしませんでした。 なぜなら、マークを添付したからといって味わいが変わる訳ではないからです。
お客様にしてみれば「マークが付いて値上げなら、マーク要らない!」というお気持ちだろうなぁ・・・と。

「お値段据え置き」という強引な決断のおかげで、最初は薄利になり本当に大変でした。でも、少しずつ口コミでお客様が増えてきたので、何とかここまで続けることができました。
これも、当店の豆達を気に入ってくださっているお客様のおかげです。

これからも、焼きたてや品質にこだわって「自分達が本当に欲しいものだけを提供していく!」という姿勢を、貫いていきたいと思います。

<参考>
有機栽培豆に害虫が見つかったら?

意外と知られていない有機栽培の意味(無農薬・減農薬表示はダメ)
有機JASマークとは

きまめや
生豆屋(きまめや)

有機栽培(オーガニック)コーヒー豆に害虫が見つかったら?

お国の事情

以前、有機JAS認定を受けた「有機栽培(オーガニック)コーヒー豆」は輸入時の消毒処理(くんじょう)が施されていません、というお話をしました。
消毒(燻蒸・くんじょう):コーヒー豆に害虫が見つかると、豆ごと薬品で消毒処理されること。

「じゃあ、有機栽培コーヒー豆に害虫が見つかっても消毒しないの?」というお問い合わせがありましたので、ちょっとお話させていただきます。

日本に生息しない害虫が見つかった場合に、消毒するかどうかは「有機栽培」とは関係ありません。 日本の食物検疫所が「この害虫が入国すると、国産農作物が危ない!」と判断すれば、どんな豆だろうと消毒されます。
もちろん、その処理自体が人体に有害かどうかも問題外。あくまで虫を入れないための処理です。

つまり、いくら現地の生産者が頑張って「有機栽培」豆を作っても、輸入時に消毒されたり、日本で保管・販売時に消毒されたりすると「有機栽培」では無くなってしまうのです。

4段階の有機JAS認定

そういう訳で、有機JAS法が定められてから本当に「有機栽培」かどうかをしっかりと区別するようになりました。
コーヒー豆輸入では、有機JAS認定が次の4段階で必要になります。

1.生産者が認定    :現地の農園
    ↓
2.輸入業者が認定   :輸入商社など
    ↓
3.小分け業者が認定  :コーヒー豆問屋など
    ↓
4.製造業者が認定   :自家焙煎の小売店
    ↓
   消費者へ

当店ではのJAS認定を受けており、将来的には輸入業者の認定も受ける予定です。
この4段階を全てクリアした豆だけが「有機栽培(オーガニック)コーヒー豆」として日本で販売できます
もし、この過程で「消毒」された場合は、もちろん「有機栽培(オーガニック)」として販売することはできません。

でも「無農薬栽培」としては販売可能です。
ここが「有機栽培」との大きな違いで、何の認定が無くても販売できるのが「無農薬栽培」コーヒー豆です。
※「有機栽培コーヒー」であれば、「有機栽培(無農薬)コーヒー」の表示も可能です。 しかし、「無農薬コーヒー」は「有機栽培コーヒー」を名乗ることができません。

無農薬栽培というと安心な響きですが、もし「無農薬」だけしか書いてなかった場合は「オーガニックとは認められない」ので要注意です。「有機栽培」であれば「オーガニック」と同じ意味になります。

有機栽培=オーガニック(無農薬の認証あり)
無農薬栽培=オーガニックじゃない(無農薬の認証無し)


有機JAS認証団体も「無農薬」表示は認めないと言っていますが、現時点で法的な強制力は無いようです。

<参考>
燻蒸その1 コーヒー豆は植物だった
燻蒸その2 臭化メチルとは
燻蒸その3 燻蒸による残留基準は無し
燻蒸その4 臭化メチルに代わるもの
燻蒸その5 安全な燻蒸?
燻蒸その6 産地燻蒸の話 
意外と知られていない有機栽培の意味(無農薬・減農薬表示はダメ)


きまめや
生豆屋(きまめや)