コーヒー豆に住む害虫の秘密

害虫ブロッカの生息地

2015年9月現在、ネパールとパプアニューギニア以外の全てのコーヒー生産国で生息していると言われる害虫ブロッカ(スペイン語名:Broca、英語名:Coffee Berry Borer)。
この2~3mmの小さな害虫のおかげで、世界中でどれだけの経済的な損失と農薬による環境汚染が広まったのか・・・計り知れません。

私が2008年にハワイ島コナへ行ったときには、まだブロッカは上陸していませんでした。しかし、現在は残念ながら生息地となっています。
当時、ハワイコナ農園主が「コナではどこの農園も、農薬は不要」と言っていたのが遠い昔のことのようです。

ところで、なぜブロッカは強いコーヒー豆のカフェインにも負けずに繁殖を続ける事ができるのでしょうか?
実はブロッカ以外の虫は、カフェインが強すぎてコーヒー豆の中で成長することができません
この「カフェインに負けない理由」が、最近の研究から明らかになりました。

コーヒー豆のカフェインに負けない虫の秘密

The Lawrence Barkeley国立研究所の Javier Ceja-Navarro が、ブロッカの腸内に「カフェインを無毒化する細菌」が存在することを発見しました。
この細菌のおかげで、ブロッカはカフェインを分解することができるという訳です。

これは、抗生物質をブロッカに投与して腸内細菌を殺した際に、そのブロッカがカフェインを分解できなくなったことから判明しました。
カフェインを分解できないブロッカは、生き残っても繁殖することが出来なかったということです。

さて、今回の発見から各国のブロッカ対策はどのように変わっていくのでしょうか?
「抗生物質をコーヒー農園で大量に蒔く」という恐ろしいこと(※)が起こらないと良いのですが。

※細菌感染症から人類を救った抗生物質は、現在の医療等ではその使用量が度を超しているために、抗生剤の耐性菌を生み出し、また使用過多による体内の有益菌までも死滅させることがあると言われています。

【本レポートの参照元】
Gut microbiota mediate caffeine detoxification in the primary insect pest of coffee(NATURE COMMUNICATIONS)
抗生物質の多用で、薬物耐性菌の数・死亡者数が増加(THE WALL STREET JOURNAL)
抗生物質が効かなくなったらどうすればよいのか(TED)

<参考>
コーヒー豆屋を始めた理由(コーヒー嫌いだったのに)

きまめや
生豆屋(きまめや)

ブラジルの農薬中毒事件

さび病対策

多くのコーヒー豆生産国で、コーヒー農家が一番恐れている のは「さび病」と「虫害」です。その対策として多額のコストをかけて農薬散布をしていると言われています。
「さび病」は「さび病菌」によるもので、一度かかると瞬く間に繁殖し、葉の色があせてて光合成できなくなるため枯れてしまいます。この病気のおかげで、セイロン産コーヒーが全滅、紅茶の栽培に切り替わったという経緯もあるくらいです。

ブラジルの農薬中毒事件

この「さび病」に絶大な効果を発揮する農薬の一つが「BAYSISTON」です。この農薬が、1999年ブラジルで中毒事件を引き起こしました。
30人のコーヒー農園労働者が中毒症状を起こし、うち12人が死亡。大きな社会問題へと発展しました。
「BAYSISTON」は、ブラジルで現在も使用されている農薬で、コーヒーの木の根本付近に施します。そこから吸収された農薬が、木全体に行き渡って「さび病」を予防するということです。
農薬を開発した会社は「コーヒー豆には問題なし」と判断していますが。まだ新しい農薬で、残留データが少ないため何とも言えません。

またコーヒー農園の労働者は文盲率が高く、農薬の危険性に対する知識が少ないのが現状です。 暑くて湿度が高い気候のため、農薬散布時に必要な装備を怠り、かなり危険な状態で仕事をしています。
このような状況下で起こった過去の事故が、装備を怠ったから仕方ないよ!と終止符を打ってもよいのでしょうか。
彼らの苦痛は、いずれ私たちにも巡ってくるような気がしてなりません。

<参考>
ブラジルで人気の農園

きまめや
生豆屋(きまめや)