あの味を求めて(カフェオレ秘話)

本場カフェオレの味を求めて。

本場カフェオレとの出会い

十数年前、フランスのパリに行った時のこと。
貧乏学生だった私は、美術館巡りをするために小さなホテルに泊まりました。朝食付きの格安ホテルです。
フランス語は「ぼんじゅーる」「めるしー」くらいしか言えなかったので、身振り手振りで何とか宿泊手続きをしました。

外食できるほどお金が無かったので、とりあえず買ってきたものを部屋で食べていると、掃除係の人がきて怒り始めました。
「○×△□!」
・・・・とフランス語で、ホウキを振りながら滅茶苦茶怒っています。

いくら怒られても意味がサッパリ分からないのでポカーンと口を開けていると、諦めて部屋から出て行きました。
たぶん「部屋で食べちゃダメじゃない!」と言いたかったのかも知れません。
今となっては、分かりませんが・・・。


翌朝、「昨日怒られたし、何か気まずいな~」と思いならが朝食の席につくと、クロワッサンとカフェオレが運ばれてきました。
「朝ご飯は、これだけ?」と思いつつ、パンをひとくち食べた後カフェオレを飲んでみると・・・

「美味しい!!」

なぜこんなに美味しいの?
何が違うの?
とにかく美味しい!!

全く期待していなかった朝食でしたが、そのカフェオレが生涯忘れられない味わいになったのでした。

あの味を求めて・・・

当時、自分がコーヒー豆屋になるとは夢にも思っていませんでしたので、伝説の味わい(?)も、思い出の一つに収まっていました。
しかし。いざコーヒー豆屋を始めるとなると、どうしても「あの味わい」を再現したくなるものです。

一体、何が違ったのでしょうか?
いろいろと調べたところ、下記のような違いが考えられました。

(1)水が違う(フランスは硬水、日本は軟水が多い)
(2)ミルクが違う
(3)豆が違う(豆の挽き加減が違う?焙煎が違う?)

かなり大雑把な分類で、実際には違うところもあるかと思います。
しかし実験の結果、(3)の焙煎加減だけは譲れないポイントだと確信しました。

なぜなら、実際にごく深煎り豆でカフェオレを作ったところ、近い味わいを再現することができたからです。
まさに伝説のカフェオレ!

伝説のカフェオレのポイントは、やはりパンチの効いた強い苦味のあるコーヒー豆を使うこと。繊細な苦味や微かな酸味は、ミルクの打ち消されてしまいます。
深煎りに適した数種類の豆を使い、フレンチからイタリアンローストの間で焙煎すれば大丈夫です。

そして、挽き加減はいつもより細かめに。濃い味わいになりますが、ミルクと合わせるとちょうど良いコクに変わります。
※当店の豆では、「ヨーロピアンブレンド」が最適です。

さらに硬水を使って抽出すれば、もっと近い味わいになるかも・・・。硬水は軟水よりも苦味が前面に出て、酸味は感じられなくなりますからね。よろしかったらお試し下さい。

伝説を再現したら、また本場のカフェオレが飲みたくなりました。今度は、もっとしっかりフランス語を勉強してから行きたいです。
怒られたら、ちゃんと謝れるように・・・。

有機栽培(無農薬)ヨーロピアンブレンド

きまめや
生豆屋(きまめや)

硬度別に実験「軟水・硬水・超硬水」

ミネラルウォーター

水の硬度別に実験

以前、硬度の違う水(軟水・硬水)によって、コーヒーの味わいがどのように変化するかをレポートしたことがありました。
それに関連してある出版社から「軟水・硬水」の取材依頼がありましたので、先日再度「水の実験」を行いました。

今回の取材で使用した水は、市販ミネラルウォーターで「軟水」「硬水」「超硬水」の3種類。コーヒー豆は、酸味と苦みのバランスがとれた「有機栽培ガテマラ(中煎り)」を使用。
硬度によって、どのように味わいが違うかを比較してみました。

【水の硬度・豆知識】
※硬度とは:水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの量を、これに相当する炭酸カルシウムに換算して数値で表したもの。

※軟水・硬水とは:硬度が高い水を「硬水」、低い水を「軟水」という。

※硬度は水源の種類に大きく影響され、一般的に地下水の方が河川水などに比べて高い。欧米では硬水が殆どだが、日本のように地中での滞留時間や河川延長が短い場合、硬度は低くなる。そのため、国内の水道水は殆ど「軟水~中硬水」である。

※実験で使用したミネラルウォーター
軟水:国産
硬水:フランス産(エビアン evian)
超硬水:フランス産(コントレックス Contrex)
 

実験の結果

苦味:硬水(硬度が高い)ほど、苦味が強く感じられた。
酸味:軟水は適度な酸味があり、硬水(硬度が高い)ほど酸味が消えた。
渋味:軟水は適度な渋味があり、硬水・超硬水はあまり渋味を感じなかった。
風味:軟水(硬度が低い)ほど、複雑な香りやまろやかさが感じられた。
—–
「超硬水」は、硬度1500程度でかなり強烈な苦味を感じました。
もし、何も知らないで飲み比べたら・・・同じ豆を使用したとは、絶対に気付かないでしょう。
「もっと刺激的な苦味を!」という方には、ピッタリの水かも知れませんね。

一方「硬水」は、苦味がきいていて「まろやかさ」が少なかったですが、比較的飲みやすかったです。

そして「軟水」は、いつもの「まろやかで香りとコクがあり、適度な酸味があるガテマラ」と同じでした。
国産のこの味わいに慣れているせいか、取材の方々や当店スタッフ達も「軟水が一番良い」という意見が多かったです。


ミネラルウォーター使用時の注意

まず、選ぶ時には硬度に注意をしましょう。上記の実験結果のように、硬度が違えば味わいも全然違うものになってしまいます。

あとペーパードリップ時に意外と大変なのが、ペーパーフィルターの湯通し(紙の臭い消し)です。
頑張って水にこだわったのに、出来上がったコーヒーが紙臭いと残念ですね。かといって、ミネラルウォーターを臭い消し用に使うのは勿体ないですし・・・。
そういう時は、湯通し用に別途水道水を沸かしておくのがおすすめです。「そんな面倒な事できない!」という方は、湯沸かしのお湯などで湯通しして、少し置くだけでも紙臭さがだいぶ抜けます。
もちろん、ネルなど抽出後の香りに影響を与えにくいものなら問題無いですね。

<参考>
水の実験「軟水・硬水・水道水」
ペーパーフィルターの臭いを消す方法
無漂白と酸素漂白、どちらが良い?(ペーパーフィルター)

きまめや
生豆屋(きまめや)

コーヒー成分クロロゲン酸と水の硬度

硬度によってクロロゲン酸量が変わる?

以前、水の硬度によってコーヒーの味わいがどうかわるかについて、実験・レポートしましたね。
実験結果から、硬度が高い(硬水)ほど苦味が強く、低い(軟水)ほど酸味やまろやかさが出る・・・ということでした。

今日は、「コーヒー成分のクロロゲン酸は、硬度によって抽出されやすくなるのか?」について考察したいと思います。
クロロゲン酸といえば・・・近年成人病予防に効果アリという研究結果が多く出ている、気になる成分ですね。

味わいの好みでコーヒーを選ぶ方だけでなく、病気予防のために・・・
という方もいらっしゃるかと思いますので、参考までにご報告させていただきます。

酸味とクロロゲン酸の関係

日本調理科学会誌で発表された論文(※)によると、クロロゲン酸量は硬水で抽出するよりも、軟水で抽出した方が多くなると報告されています。
さらに、酸味が強いとクロロゲン酸量も多くなる傾向があるということでした。

つまり同じコーヒー豆で抽出した場合では、軟水で抽出した方がクロロゲン酸が多く抽出されるということになります。
軟水は酸味が出やすいので、酸味と連動するクロロゲン酸が多くなるのは納得できますね。

それでは、硬水だとクロロゲン酸を摂取できないか?というと・・・
コロンビア産豆の実験でクロロゲン酸量が、硬水39mg/100mlに対して軟水41ml/100mlと、わずか2mgの違いとなっています。
他の豆の実験でも10mg/100mlも違わないので、あまり神経質になる必要は無いと思います。
強い苦味が好きならやっぱり硬水がおすすめですし、少し多めにコーヒーを飲めば同じ量を摂取できると考えられます。

ちなみに、日本の水道水は殆ど軟水なので、そのままご利用いただければクロロゲン酸が抽出されやすいということになります。
あと、コーヒー豆は焙煎が深くなるほどクロロゲン酸が減っていきますので、もし積極的に摂取したい場合は深煎りを避けた方が良いでしょう。

(※)日本調理科学会誌Vol.41 No.4 257~261(2008)
「コーヒーの味に及ぼす抽出条件およびクロロゲン酸量の影響」

<参考>
コーヒーのダイエット効果(血糖値を抑える)
心筋梗塞&脳梗塞予防にコーヒー

きまめや
生豆屋(きまめや)

薄いコーヒーに合う豆

本来のアメリカンじゃダメ

薄いコーヒーの代名詞でもある「アメリカンコーヒー」は、浅めの焙煎豆 をたっぷりのお湯でいれたコーヒーのことですが・・・。
コーヒーを薄めて飲むなら、むしろ深めの焙煎豆を使った方がずっと美味しく出来上がります。だから、お客様から「薄いコーヒーが好きだけど、どの豆が良い?」と聞かれれば、「やや深めの焙煎」または「深煎り」をおすすめします。

そして、たっぷりのお湯で抽出するのではなく、定量で抽出してからお湯で割るのが美味しい薄いコーヒーの条件になります。
※詳細は、「お湯割り一つ!」をご覧下さい。

もし浅めの焙煎豆を薄めると・・・

日本はアメリカと違って、酸味の出やすい軟水が主流です。この軟水をたっぷり使って、酸味の強い「浅めの焙煎豆」を抽出するとどうなるでしょう?
本場アメリカで飲むよりもずっと酸味が強く出る上に、お湯をたっぷり入れるため浅煎り豆の「えぐみ」や「渋み」が出てきます。せっかく良質な豆を使っても、美味しくない「薄いコーヒー」になったら残念ですね。
そういう訳で、日本で浅めの焙煎豆を美味しく飲むなら、やはり粗めに挽いて普通~濃いめに抽出するのがおすすめです。
そして、日本の軟水で「薄いコーヒー」を入れるなら、迷わず「やや深め~深煎り豆」を選ぶようにしましょう。

きまめや
生豆屋(きまめや)

水の実験「軟水・硬水・水道水」

3種類の水で実験

「硬水」と「軟水」では、コーヒーの味が全く異なることについてお話ししました。これを自宅で実験するとなると、コーヒー豆だけでなく細口ポットや器具を水の種類分用意して同時に抽出する必要がありますので、結構大変です。
そこで、私が実験してみましたのでご報告したいと思います。

抽出条件
有機栽培ガテマラ(中煎り、酸味系)各25gを中挽きにして、ペーパーフィルター で抽出。湯の温度は90度Cで、それぞれ250cc抽出。濃いめに作ってみました。
使用した水は、比較的入手しやすかったヴォルビック(軟水)、エビアン(硬水)、そして水道水(軟水)です。

結果と考察

(1)軟水(ヴォルビック):
口に含んだ時に、まろやかな感じ。喉ごしはガテマラ特有のキリッとした酸味が感じられた。人肌程度に冷ますと、強い酸味を感じた。

(2)軟水水道水、神奈川県相模原市一戸建て):
酸味が(1)よりも若干強く感じられ、雑味があった。基本的には(1)と同系統の味わいだが、まろやかさが劣る。

(3)硬水(エビアン):
酸味はほとんど感じられず、舌には刺激的な苦み。喉ごしも強い苦みが感じられた。人肌程度に冷ますと、かすかな酸味を感じた。

一般的には、カフェインやタンニンといったコーヒーの主成分がしっかり抽出される「軟水」の方がコーヒーに適していると言われています。まろやかで、香り豊かに仕上がる点も「軟水」の長所。
ただ、カフェインが少ない方が良いとか、強い苦みが大好きな方には、むしろ「硬水」の方がおすすめです。
日本の水道水は軟水になりますが、そのまま使うとやはり雑味が感じられました。できれば浄水器や濾過器を使用した方が、より美味しく召し上がれると思います。

きまめや
生豆屋(きまめや)

コーヒーに適した水「軟水・硬水」

第一条件: 湯冷ましで美味しい水

以前、コーヒーに適した水として「湯冷ましで美味しい水」というお話をしました。人肌程度の温度が一番味が分かりますので、その温度で美味しければ第一条件はクリアしていると言えます。
コーヒー抽出液の約97%は水分ですから、水が不味ければコーヒーが不味いのは当たり前ですね。ただ、この当たり前のことを実行せずに「コーヒーって美味しくない」と思っている方もいらっしゃるかも知れません。
もしいつも水道水を使うなら、一度は沸騰させて塩素とカルキ臭を飛ばしましょう。いったん沸騰させた水を、抽出用の細口ポットに移せば温度も適温の90℃前後になって美味しくいれられます。
そして、一度沸騰したお湯はできるだけ使い切るようにし、何度も沸騰させて不純物が蓄積することが無いように気をつけましょう。

第二条件: 軟水と硬水

さらに自分好みのコーヒーをいれるために水を選ぶとしたら、どのようなポイントがあるのでしょうか。
日本の水(水道水を含む)は「軟水」、ヨーロッパ、アメリカの水の殆どは「硬水」であると言われています。先日お問い合わせいただいた韓国在住の方の話ですと、韓国も「硬水」だそうです。
そういう訳で、当店の豆に関するコメントは日本の水「軟水」でいれた場合を基準に書かれています。
ところで、軟水と硬水ではコーヒーの味が異なるのでしょうか?

答えは「全く違う!」です。
「軟水」でコーヒーをいれると「まろやか」で「酸味」が出やすく、
「硬水」でいれると、「苦み」が強調されます。

自分の好みや、その日の気分に合わせて水を選ぶのも楽しいですね。
軟水で入手しやすいミネラルウォーターは「ヴォルビック」や「南アルプスの天然水」、硬水では「エビアン」「ヴィッテル」等があります。 ミネラルウォーターを購入する際は、一括表示部分をチェックして水の硬度(※)を調べてみると良いですね。

※軟水と硬水
水のなかに含まれるカルシウムとマグネシウムの合計量を数値化したものを「硬度」と呼びますが、この数値が高いものを硬水、低いものを軟水と呼びます。
つまり、カルシウムとマグネシウムがたくさん入っている水が硬水、少ない水が軟水ということです。

きまめや
生豆屋(きまめや)

湯の「質」と「温度」

そのお湯大丈夫ですか?

コーヒー豆にこだわることは、もちろん大事です。美味しいコーヒー豆を使えば、相当下手な入れ方(失礼)をしても、そこそこ美味しいコーヒーが出来上がるからです。

でも、注ぐ「お湯」も実は大事です。一杯のコーヒーの殆どはお湯ですからね。
例えば、湯沸かし器で煮詰まったお湯を持ってきて「おいしいコーヒーいれてくれる?コーヒー豆屋でしょ?」って言われても困ります。豆の美味しさでカバーして「比較的おいしいコーヒー」ならいれることができますが。

マイルドで酸味のあるコーヒーをいれるならば軟水だ、苦いコーヒーを入れるならば硬水だ、どこそこの山でとれた水が最高だ・・・などとよく聞きます。しかし、一番大事なのは「湯冷ましでおいしく飲めるか」ということではないでしょうか。
「どこ産の水がおいしい!」と感じるかは、コーヒーの好みと同じで十人十色。とにかく、いつも使っている水を一度沸騰させ、ぬるま湯にしてから飲んでみましょう。
ぬるいと一番クセが出るから、味の善し悪しがすぐにわかります。それで美味しければ、とりあえずコーヒー抽出用の水として合格!ということになります。

ちなみに私がコーヒーを試飲する時は、水道水を濾過器に通した「純水に近い水」を使います。ほとんど純水なので無味無臭、ミネラルもありません。
そのかわり様々な有害物質も除去されていて、コーヒー豆だけの味をストレートに堪能できるので、私には好都合な水なのです。

湯の温度も大事・・・だけど面倒なら沸騰直後で。

ペーパードリップやネルドリップで抽出するときは、水から一度沸騰させて、ちょっと冷ましたくらいの湯加減(90℃前後)がおいしくいれられます。
なぜかというと、沸騰した湯でいれると、香りが飛びやすくなり、本来喜ばしく ない味(渋みやイヤな酸味)が出やすくなるからです。繊細な香りのコーヒーであればあるほど、この湯の温度が大事になってきます。
ただし、ちょっと冷ました湯加減でいれる場合は、ドリッパーやサーバー、 カップをあらかじめしっかりと温めておきましょう。そうでないと、恐怖の「ぬるいコーヒー」を飲む羽目になります。

「そんなこと面倒でやってられないよ!」と言う方は、沸騰したてのお湯で妥協しましょう。多少香りは飛びますが、温かいコーヒーを飲むことができる方が幸せが大きいのではないでしょうか。特に冬場は、すぐに冷めてしまいますからね。

あと、朝忙しい時に便利なコーヒーメーカーも、沸騰した湯で高温抽出する場合 が多いです。コーヒーメーカーはスイッチ一つで保温までしてくれる優れモノ。でも、同じ豆でもコーヒーメーカーでいれると、また違った味わいになるように思います。
「いつものコーヒー」と「ここぞ!というときのコーヒー」を分けるのも良いか もしれませんね。

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