硬度別に実験「軟水・硬水・超硬水」

ミネラルウォーター

水の硬度別に実験

以前、硬度の違う水(軟水・硬水)によって、コーヒーの味わいがどのように変化するかをレポートしたことがありました。
それに関連してある出版社から「軟水・硬水」の取材依頼がありましたので、先日再度「水の実験」を行いました。

今回の取材で使用した水は、市販ミネラルウォーターで「軟水」「硬水」「超硬水」の3種類。コーヒー豆は、酸味と苦みのバランスがとれた「有機栽培ガテマラ(中煎り)」を使用。
硬度によって、どのように味わいが違うかを比較してみました。

【水の硬度・豆知識】
※硬度とは:水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの量を、これに相当する炭酸カルシウムに換算して数値で表したもの。

※軟水・硬水とは:硬度が高い水を「硬水」、低い水を「軟水」という。

※硬度は水源の種類に大きく影響され、一般的に地下水の方が河川水などに比べて高い。欧米では硬水が殆どだが、日本のように地中での滞留時間や河川延長が短い場合、硬度は低くなる。そのため、国内の水道水は殆ど「軟水~中硬水」である。

※実験で使用したミネラルウォーター
軟水:国産
硬水:フランス産(エビアン evian)
超硬水:フランス産(コントレックス Contrex)
 

実験の結果

苦味:硬水(硬度が高い)ほど、苦味が強く感じられた。
酸味:軟水は適度な酸味があり、硬水(硬度が高い)ほど酸味が消えた。
渋味:軟水は適度な渋味があり、硬水・超硬水はあまり渋味を感じなかった。
風味:軟水(硬度が低い)ほど、複雑な香りやまろやかさが感じられた。
—–
「超硬水」は、硬度1500程度でかなり強烈な苦味を感じました。
もし、何も知らないで飲み比べたら・・・同じ豆を使用したとは、絶対に気付かないでしょう。
「もっと刺激的な苦味を!」という方には、ピッタリの水かも知れませんね。

一方「硬水」は、苦味がきいていて「まろやかさ」が少なかったですが、比較的飲みやすかったです。

そして「軟水」は、いつもの「まろやかで香りとコクがあり、適度な酸味があるガテマラ」と同じでした。
国産のこの味わいに慣れているせいか、取材の方々や当店スタッフ達も「軟水が一番良い」という意見が多かったです。


ミネラルウォーター使用時の注意

まず、選ぶ時には硬度に注意をしましょう。上記の実験結果のように、硬度が違えば味わいも全然違うものになってしまいます。

あとペーパードリップ時に意外と大変なのが、ペーパーフィルターの湯通し(紙の臭い消し)です。
頑張って水にこだわったのに、出来上がったコーヒーが紙臭いと残念ですね。かといって、ミネラルウォーターを臭い消し用に使うのは勿体ないですし・・・。
そういう時は、湯通し用に別途水道水を沸かしておくのがおすすめです。「そんな面倒な事できない!」という方は、湯沸かしのお湯などで湯通しして、少し置くだけでも紙臭さがだいぶ抜けます。
もちろん、ネルなど抽出後の香りに影響を与えにくいものなら問題無いですね。

<参考>
水の実験「軟水・硬水・水道水」
ペーパーフィルターの臭いを消す方法
無漂白と酸素漂白、どちらが良い?(ペーパーフィルター)

きまめや
生豆屋(きまめや)

実験!チャフを飲む(2)

コーヒー豆中心部の線の所に入り込んでいるチャフ。

チャフ(chaff)を外す

高濃度で抽出すると「強い苦味を伴った漢方薬風の香り」がするチャフ。このチャフが薄まった状態でコーヒーに混ざると、味わいにどのように影響するのでしょうか。
今回は、自称「味にうるさい」友人5名に頼んで、味比べをしてもらいました。
実験に使った豆はコロンビア。酸味・苦みのバランスがある豆を選びました。

まず、豆を大きく砕いて、真ん中のセンターカットに挟まっているチャフを丁寧 に取り除きました。この作業が、と~っても大変。センターカットのチャフって豆に食い込んでいるので、なかなか外れないのです。
「本当にコーヒー好きな人は、これを丁寧に全部取るんだ!」とコスタリカに住む友人が言っていたのを思い出しました。
・・・が。正直、もうウンザリ!と言いたくなるくらい、大変な作業でした。

チャフ入りとチャフ無し、どっちが美味しい?

さて。苦労して「チャフ抜」きにした豆と、「チャフ入り」の豆では、どのように味が違うのでしょうか?
どちらが「チャフ入り」か分からないようにして、美味しい方を選んでもらいました。

その結果、驚いたことに・・・
5人中3人は、「チャフ入り」の方が美味しい!と答えました。
理由は、「味わい深くておいしい」「味に奥行きがある」というものでした。その3人は、絶対に自分は「チャフ抜き」の方を選んだ!と確信していたようです。実は反対だったと知ったときに、ビックリしていました。

残りの2人は、「チャフ無し」の方が美味しいと答えました。
「チャフ無し」の方は、「酸味が強く、個性が出てハッキリした味わい」 とのこと。この2人は、酸味が好きな友人達だったのです。

私も味見しましたが・・・「チャフ入り」の方が好きでした。どうしてそうなるの?と聞かれてもうまく説明できませんが。たぶん、チャフが自然に入っていることで「コーヒー」として完成した味わいに感じているのかもしれない、と思いました。
他の豆や焙煎条件の違う豆で実験すれば、また違った結果が出るかもしれません。

ただ一つ分かったことは、色々なところで「チャフは渋みを伴い、嫌な味わいになる」と説明されていますが、そうでは無い場合もありえるということです。
どうしてもチャフは嫌だ! という方は、挽いたコーヒー粉を揺すりながら、表面にあるチャフを軽く吹き飛ばす方法もあります。
よろしかったら、お試し下さい。

<参考>
実験!チャフを飲む(1)

きまめや
生豆屋(きまめや)

実験!チャフを飲む(1)

チャフ(chaff)って何?

英語で「もみ殻、刻みわら、廃物、くだらない物」の意味。これでは、さっぱりわからないですね。
他にも、「クズ、カス、燃え殻」の意味があります。コーヒーの抽出で問題になるチャフは、この「カス、燃え殻」あたりでしょうか。
コーヒー豆(種子)を包んでいる薄皮をシルバースキン(銀皮)と呼びますが、その大部分は精製過程で取り除かれます。
取り除かれないで、残ってしまうのは、コーヒー豆の真ん中にみえる白っぽい線のところ。あの線が、シルバースキンになります。

焙煎して挽くと、シルバースキンが白い粉になり「うわ、チャフだ!」と、いきなり嫌われてしまう訳です。でも、何でそんなに嫌われるのでしょうか。

チャフを飲む・・・ぐっ。

チャフは渋味をはじめとした雑味や、コーヒーの濁りの原因だと言われています。
本当かな?と思った私(店長)は、せっせとチャフを集めて飲んでみました。
まず1gのチャフで120cc抽出(ちゃんと1分間蒸らして)。1gだけ?って思うかもしれませんが、カップ半分くらいの量はあります。水洗式中煎りコーヒー豆で約500g~800g分からとれるチャフ量に相当します。
#チャフは軽いので、たった1gでも多いのです。

飲んだ感想は「ぐ・・苦い!」
「良薬口に苦し」という言葉がピッタリの味わい。スッキリした強い苦味で、液体も濁りが無く綺麗な紅茶色。「渋み」は思ったよりも、ずっと少なかったです。
そして、ドクダミと米ぬかを炒ったものを合わせたような、漢方薬風の香り。この香りだけは、コーヒーとはかけ離れていました。
漢方薬風の香りですから、決して美味しいものでは無いですね。やはりチャフだけで飲むのは無理があったようです。

さて。この「意外と渋みの少ない、強い苦味を伴った漢方薬風の香り」が、コーヒー豆とブレンドされた時に、どのように影響してくるのでしょうか。
さらに実験を続けていきたいと思いますので、お楽しみに!

<参考>
実験!チャフを飲む(2)

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生豆屋(きまめや)

実験!蒸らしの極意

蒸らしとは?

コーヒー粉の表面を湯で湿らせて、しばらく置く状態のことです。主に、ペーパードリップやネルドリップで抽出し始める時に行います。
でも、早くコーヒーを飲みたいのに何でわざわざ蒸らすのでしょう?

1)全体を均一に湿らせることで、偏った湯の通り道を作らず、均一に抽出できるようになるため。
しっかり均一に蒸らすことができれば、抽出時に真ん中にだけお湯を注いでも、ちゃんと全体から抽出されます。

2)コーヒー粉が湿ることで膨張し、湯に触れる面積が増え、さらに湯が浸透しやすくなって成分がしっかりと抽出されるため。
抽出時間が短いと、軽くてコクの足らない薄っぺらな味わいに。逆に長すぎると、苦み・酸味が出過ぎてキツイ味わいになります。

最適な蒸らし時間

では、どのくらい蒸らすと一番美味しいのでしょうか?早速、焙煎後1日経過した豆で実験してみました。

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時間  味の特徴
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 0秒 軽くてコク・香りが少ない。
30秒 コクと香りが出てくるが、やや軽め。
60秒 コクと香りが出ていて、まろやかさと甘みあり。
90秒 コクと香りが出ていて、苦み酸味がハッキリ。
120秒 香りが少なく、味わいのバランスが崩れキツイ感じ。
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私は「1分前後」が一番味わいとして完成度が高いように感じました。酸味・苦みのバランスも良く、それぞれの味が突出していません。甘みも一番強く感じられました。 そして、まろやかな口当たりで、喉ごしも雑味が残りません。
※上記時間は「湯を注いだ直後~蒸らし終了まで」を1分間としています。膨らみ終わった所から1分だと、新鮮な豆なら1分20秒くらい経過してしまうので、要注意です。
※新鮮な豆ほど、お湯を注いでから膨らみ終わるまでに時間がかかります。

ただ、あまり美味しくない豆で1分蒸らして「なんだ、美味しくないなぁ!」と怒らないでください。あくまでも、美味しい豆を「より」美味しくする手段であり、マズイ豆が美味しく変身!・・・という訳ではありません。
美味しい豆を入手した時、コーヒータイムを満喫したい時に是非やってみていただきたいと思います。

<参考>
実験!古い豆でも蒸らす?
蒸らしで豆を知る

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生豆屋(きまめや)

実験!前半と後半

前半と後半の違い

以前「いつも味が違う理由は?」で、抽出の前半と後半では全然味わいが違うというお話をしましたね。
それでは、ドリップしはじめ(前半)と、終わり頃(後半)では、ドリップされたコーヒー液の味わいはどのように違うのでしょうか?
当店のコロンビア(中挽き30g・抽出量360cc分)を、180ccずつに分けて実験してみました。

ドリップ前半(180cc):
苦み・酸味がしっかり出ていて、濃い味わい。
なめらかな口当たりでまったりとしたコク。
コロンビア特有の香りあり。

ドリップ後半(180cc):
味が薄く、酸味・苦みのメリハリが少ない。
かなり軽い感じ。
やや弱めの、コーヒーの香りあり。

ドリップの特性

この実験で、前半と後半の違いがハッキリしました。ドリップ前半で豆本来の香りやコク・味わいが濃く抽出、ドリップ後半で適度に薄められる・・・という流れになります。
このドリップの特性を利用すれば、コクのある濃い味わいが好きな方は、豆の量を増やすことで理想の味わいに近づくことができそうですね。

でも、濃いコーヒーは、胃が弱い方にはお勧めしません。なぜなら実験で抽出した前半(180cc)を全部飲んだとき、結構きつかったからです。
「豆量を増やした濃さ」というのは、「深煎り豆を適量抽出した濃さ」とは全然違いますね。
それは「コーヒー」ではなく、「コーヒーエキス」という言葉がピッタリかも知れません。
濃い味わいが好きな方、エスプレッソが好きな方は、ぜひお試しください。

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