エスプレッソ・レポート(6)「本場エスプレッソの味わいは?」

本場エスプレッソの味わいは・・・

「どうだったの?」ということは、まず日本のカフェ、それもエスプレッソが飲めるシアトル系カフェと比較した方が良いですね。
答えは、当たり前ですが「バールによる」です。
日本でも、美味しいカフェもあれば「あれ?」な味わいのカフェもありますね。それはローマでも全く同じだと思います。
ただ全体的な印象としては、やはり本場の方が一枚上手で「エスプレッソ」そのものの味わいを楽しめる、と感じました。

まず日本では、「ミルクたっぷり入りエスプレッソ」が基本なので、「エスプレッソ」単品で注文する人は少ないですね。店内を見回しても、小さなデミタスカップで「エスプレッソ」を飲んでいる人は殆ど見かけません(少なくとも私は見たことがありません)。

そもそも「エスプレッソ」がメニューにない場合もあり、「エスプレッソできます?」と聞くと「え?!」と動揺する店員さんもいました(某最大手シアトル系カフェにて)。
このことから、カフェの方も滅多に「エスプレッソ」単品で出さないのだろう、ということが想像できます。

一方、ローマのバールでは「コーヒー=エスプレッソ」で、客も当たり前のように「エスプレッソ」を注文します。バール内を見回しても、デミタスカップを持っている人が多く、日本のカフェとは全然違う光景でした。 バリスタさんも「エスプレッソ」の味わいに自信を持って作ってくれるので、安心して楽しむことができました。
その辺の技術や意識の違いが、「一枚上手」という印象を引き出しているのかも知れません。


自分がいれるエスプレッソと比べると?(個人的な感想)

私はコーヒー豆屋なので、どうしても「クレマの下のエスプレッソ液の味わい」を最優先でチェックしてしまいます。さらにルール違反を承知で「砂糖無し」で飲むので、私の意見はあまり参考にならないかも知れません。

ただ、今回の旅行で大収穫があったのは確かです。
それは、手前味噌で大変恐縮ですが「当店の豆でいれたエスプレッソ」より右に出る味わいは無かった、ということです。
本当にずうずうしい発言ですが、これが判ったことが一番の収穫でした。むしろこれを調べるためにイタリアへ行った、といっても過言ではありません。
帰国後、エスプレッソ用の豆をご入り用のお客様に、自信を持ってオススメすることができるようになりました。自信を持てる、ということは私にとってとても大切なことなのです。

エスプレッソの味わいを決める要素は沢山あります。それは高性能のミルだったり、立派なエスプレッソマシーン、抽出技術、厚いクレマ、素敵なデミタスカップ、お店の雰囲気、そしてバリスタさんとの楽しいお話だったり・・・。
でも「クレマの下のエスプレッソ液の味わい」だけは、コーヒー豆次第です。
豆の鮮度(焙煎後・挽いた後の経過時間)と品質が一発で判る「エスプレッソ」。ミルクで誤魔化せないからこそ、違いが分かって魅力的なのかも知れませんね。


大規模店舗の規制に守られて

ところで、「ローマにシアトル系カフェがあったか?」というと、全然ありませんでした。
シアトル系カフェのようなチェーン店は全然見あたらないし、デパート等の大規模店舗もありません。
これは、イタリアでは大規模店舗参入に対する政治的抵抗が非常に強く、小さな店舗が優遇されているから、ということでした。

観光地なのに、見慣れた店が無いなんて・・・と最初はビックリしましたが、少しずつ馴染みの店を開拓していくうちにその方が良いことに気付きました。
だから市場に人が集まるし、小さな雑貨店やバールが繁盛するし、町全体が活気付くのだな、と。
日本の商店街にしてみれば、羨ましい限りですね。
でも、なぜかマクドナルドはありました。どうしてマクドナルドだけOK??

私としては、イタリアのバールは均一化されないまま、個性的なままで居て欲しいなと思います。
世界に一つだけしかないお気に入りのバールって、良いですよね。
日本でも、そんな素敵なカフェが増えて欲しいです。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エスプレッソ・レポート(5)「カプチーノとカフェラテの違い」

レオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港内バールのカプチーノ

カプチーノとカフェラテの違い

ローマのバールで、エスプレッソと一緒によく注文していたのがカプチーノ。イタリア語の発音は「カップッチーノ」に近く、エスプレッソに泡立てた牛乳を注いだものです。
イタリアでコーヒーといえば、エスプレッソのこと。つまり「コーヒーに泡立て牛乳を注いだもの」という感じですね。

ちなみにエスプレッソに泡立ててない牛乳を注いだのが、カフェラテ(イタリアでの発音はカッフェラッテが近いです)。ラッテは牛乳という意味なので、まさにイタリア版「コーヒー牛乳」ですね。
カプチーノとカフェラテの違いは、ミルクを泡立てたか、泡立ててないか・・・だけでした。口当たりは、泡が無いのでさっぱりした感じになります。
なお、カフェラテがメニューに無い場合は「泡無しのカプチーノと注文すれば大丈夫!」だそうです。
※カフェラテのコーヒーがエスプレッソ→ドリップになると、カフェオレです(フランス風)。

ここでちょっとまとめてみましょう。
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カプチーノ =エスプレッソ+泡立てた牛乳(イタリア)
カフェラテ =エスプレッソ+牛乳(イタリア)
カフェオレ =ドリップコーヒー+牛乳(フランス)

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カプチーノは「朝」限定?

カプチーノは、朝に飲むものらしいです。らしい・・・と断言を避けたのは、昼でも夕方でもバールで注文できたからです。日本の某ファストフード店のように「限定!朝メニュー」ではありませんでした。

カプチーノをいつ飲むか知らなかった私は、昼夜を問わず元気に「カップッチーノ!」と注文しておりました。それがどのくらい変なことだったのか、実はよく分かっていません。

バリスタさんは全然気にしていない様子だったので、たぶん大丈夫なのかなと・・・。次イタリアへ行ったら「なぜ昼飲まないの?」と、聞いてみたいと思います。

ところで、日本のカフェで「カフェラテ」を注文すると「カプチーノでは?」と思える飲み物が出てくることがあります。
特にアメリカ出身のシアトル系コーヒー店では、カフェラテでも泡立てた牛乳を使う場合が多いですね。
その内容は、温めただけの牛乳と組み合わせたり、泡立て方が違ったりと、お店によって様々。

とりあえず「カフェラテ=コーヒー(エスプレッソ)牛乳」ですから、どれでも誤りでは無いと思います。
ただ注文する前に、出てくるコーヒーがどういうものか?予め店員さんに聞いておくと安心ですね。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エスプレッソ・レポート(4)「クレマについて」

エスプレッソ表面に浮かぶクレマ。

クレマとは?

私達がカフェでエスプレッソを頼んだときに気にするクレマ(エスプレッソに浮かぶ泡)。その正体は、新鮮なコーヒー豆に含まれる「炭酸ガス」です。
※ドリップで蒸らす時に、新鮮なコーヒー豆だとプクッと膨らみますね?あの膨らみも、そしてコーヒーの香りも、「炭酸ガス」が関係しているのは以前お話しした通りです。

そのクレマは、
「新鮮な豆」を、
「抽出直前にパウダー状」に挽き、さらに
「適正なマシンと抽出技術」があってできる泡、と言えます。

ただし「クレマが厚い=美味」とは限りません。
高品質で新鮮な豆を使えばクレマの厚い美味しいエスプレッソができますが、低品質の豆を使えばクレマがあっても美味しさの追求は難しいです。
また最近では、古い豆でも強制的にクレマを作るエスプレッソマシンが出回っており、残念ながら美味しさの基準とは言えなくなってきているようです。

意外と薄かったクレマ

このクレマが、ローマのバールではどうなんだろう?と大変期待して行ったのですが・・・
意外にも、クレマが薄いエスプレッソを出された方が多かったです。
薄いどころか、コーヒー液が半分くらい見えているエスプレッソも。
(※クレマが厚くて美味しいエスプレッソを出すバールも、少数派ですがありましたので予めご了承下さい。)

クレマの薄さが、エスプレッソマシンの問題か、豆の鮮度の影響か、私が行った時期が悪かったのか、偶然そういうバールにばかり入ってしまったのか?・・・残念ながら、詳細は分かりません。
ただバリスタさん達は、接客態度と同様、クレマの厚さについても「全然気にしない♪」という感じだったのは確かです。

日本では「クレマが大事!」と、強制的にクレマを作る機能付きマシンまで出回っているに、ローマではあまり気にしていないのかぁ…と、少々拍子抜けしました。

日本人は見た目重視?

このとき、ふと紅茶の「ジャンピング」を思い出しました。
「紅茶を抽出する時には、茶葉がポット内で上下(ジャンピング)するのが大事!」と日本で言っているのに、本場英国では全然そんなこと気にしていなかったこと、そして「ジャンピング」と言う言葉自体、本場では使われていなかったことを。
日本では、味わいよりもむしろ「見た目」にこだわってしまう傾向があるのかも知れませんね。

ちなみに、イタリア家庭で親しまれている直火式エスプレッソメーカー(マキネッタ)では、クレマは出来ません。マシンほど圧力がかからないため、泡立たないのでした。
でも、だからと言って味わいが劣るということはありません。マシンとはまた違った、直火式エスプレッソメーカーならではの美味しさを楽しむことができます。

直火式エスプレッソメーカー・イルサ
直火式エスプレッソメーカー

ローマ滞在中、一度だけ直火式のエスプレッソをイタリア人家庭でいただく機会がありました。エスプレッソマシンとはまた違った、素朴な美味しさがとても印象的だったのを覚えています。
また、私が滞在したコンドミニアムにも3種類の直火式エスプレッソメーカーが用意されていて、さらに直火式エスプレッソ専用のガス台まであり驚きました。
小さなキッチンでも、エスプレッソ専用のガス台があるのが一般的のようです。

クレマにこだわっていないからこそ、直火式が「家庭の味わい」として愛され続けているのかな…と思いました。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エスプレッソ・レポート(3)「鮮度と砂糖」

コーヒー豆の鮮度について

残念ながら、新鮮な豆から抽出されたエスプレッソには、あまり出会えませんでした。
持ち帰り用のコーヒー豆も、挽いた状態で販売されているのが普通でしたし、バールは沢山あっても自家焙煎店は見かけませんでした。
※単に、私が行った所が偶然そうだっただけかも知れませんので、予めご了承下さい。

「自宅でミルを使って焙煎豆を挽く、という習慣は殆ど無い」という現地情報(ローマ在住の方)もあり、もしかしたら鮮度は気にしない傾向があるのかな?と思いました。
もちろん日本でも、鮮度を全然気にしない方はいらっしゃいますね。
むしろ、気にする人の方がずっと少ないかも・・・。

ちなみに「缶コーヒー」は売っていませんでした。自動販売機も街中では見かけなかったです。
そういえば1つだけ、ヴァチカン美術館の出口付近にジュースが出てくる販売機があったような・・・でも、コーヒー類は無かったです。
やはり「コーヒー=エスプレッソ」の国なんだなぁ、と思いました。

エスプレッソと砂糖の関係

「新鮮かどうか」は、エスプレッソでは分かりにくいと思います。なぜならエスプレッソには砂糖を必ず入れるため、微妙な味わいの違いが見逃されやすいからです。
さらにミルクをたっぷり入れたら・・・殆ど分からなくなりますね。
もちろん体質的に古いコーヒーが無理な方もいるので、味だけの問題ではありませんが。

ところで、なぜ必ず砂糖を入れるのでしょう?
以前「エスプレッソを無糖で飲むのは、日本人ぐらい」という話を聞いたことがありました。砂糖を入れないでエスプレッソを飲むのは、どうやらとても変なことのようです。
どのくらい変かというと・・・たとえば「砂糖を入れないで飲むココア」や「無糖のチョコレート」はどうでしょう?
無糖のココアやチョコレートに慣れていない方だと、結構辛い味わいになるかと思いますが・・・いかがでしょうか。
きっと、そんな切っても切れない関係なのかな?と思いました。

私も、バールでエスプレッソを飲むときに「やっぱり砂糖を入れるべきだろうな」とは思ったのですが・・・どうしても味を見たかったのでブラックで飲んでいました。
さらに、一人でエスプレッソとカプチーノの両方を注文することも多々あったので、相当変な日本人に見えたと思います。
とりあえず誰にも迷惑はかけていなかったので良いかなと、開き直っておりましたが・・・。

次回は、エスプレッソのクレマについてお話ししたいと思います。
——–
・・・レポート(4)に続く。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エスプレッソ・レポート(2)「バールで注文する時」

国民性の違い?

私は、ローマのバールではいつもカウンターで飲んでいました。テーブル席に比べて価格が半分~3分の1で済む上、バリスタさんの動きがよく見えて楽しいからです。
でも、「日本じゃコレは無いだろうなー」と気になった点がありました。

それは、バリスタさん達がとってもマイペースな場合が多かったことです。
具体的にどういう感じかというと・・・
注文を受けても、自分が今までやっていた作業(皿洗いや整理整頓など)を優先し、その間に他のお客さんと楽しそうに話したりしています。
特に急ぐ様子もなく、一通りの作業が終わるまで抽出には取りかかりません。5分以上待たせても(無視しても)平気。つまりお客さんを待たせることについて「全く気にしていない♪」という感じです。一方お客さんの方も、それを全然気にしていない様子でした。

「バリスタの仕事は、お客さんと楽しくおしゃべりすることも含まれる」と予習はしていたものの・・・
最初の頃はあまりの遅さに「このバリスタさん、私の注文すっかり忘れているのでは?!」とよく不安になりました。
帰る頃には「ま。こんなもんかな。」と思えるようになりましたけど。
日本なら「少々お待ち下さい」「お待たせして申し訳ございません」の言葉が出そうな所ですが、この辺は国民性の違いなんだろうな、と納得しました。

イタリアへ行く前に読んだ本では「受注→抽出→出てくるまで50秒、飲んで5秒、お会計5秒で、合計1分間あれば一連の動作が終了!」と書いてあったのですが・・・
実際にカウンターで注文してみると、上記の通り5分以上かかることも多かったです。
単に私が人気のバールや、混んでいるバールを選んで入ってしまったからかも知れませんね。空いているバールなら、もっと早かったかも?

ちなみに一度も注文を忘れられたことは無かったので、カウンターで待つ時は心配無用です。
バリスタさんの気が向けば(順番さえ回ってくれば)すぐに抽出して持ってきてくれるので、ご安心下さい。
#せっかちな方は要注意。郷に入っては郷に従え
・・・まさに “When in Rome do as the Romans do.”ですね。

受注済みの合図

バリスタさんが数人いるバールだと、受注済みの合図が決まっている場合が多いです。
たとえば、お客さんが出したレシートに手で切り込みを入れて合図としたり、ソーサを先に置いて合図としたりします。

そのソーサの合図で、「ガチャン!」とカウンターに勢いよく置かれた時には、かなりビックリしました。
私が入ったバールでは、そこまで凄くなくても作業がやけにダイナミックなお店が多かったのは確かです。
それは、バールに限らず、ジェラテリア(ジェラートのお店)でも同様でした。

大胆かつ素速く抽出してもらったエスプレッソやカップチーノを恐る恐る飲むと・・・これがまた「美味しい!」ことが多かったです。
気のせいかも知れませんが、ダイナミックなお店ほど美味しかったような?豆の回転が早く、新鮮だからでしょうか??
※ちなみに、ジェラートも最高に美味しかったです。

日本に帰ってきて、改めてサービスのきめ細かさ・心遣いに感動しました。
ただ、どっちが良いかは分からないですね。結局日本の場合は、店員さんが沢山気を遣っている訳ですから、お店側のストレスが少ないマイペースの方が精神衛生上良いのかも・・・と思ったりもしました。

——–
・・・レポート(3)に続く。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エスプレッソ・レポート(1)「値段の違いと飲み頃」

先月、はじめてイタリア(ローマ)に行ってきました。
8月後半ということもあり観光客が多い時期でしたが、とりあえずエスプレッソがどういうものか雰囲気はつかめたと思います。そして、日々私達が提供しているコーヒー豆達が「エスプレッソにも最適だった!」と自信を持つこともできました(これが一番の収穫でした)。
やはり、自分の目で見て確かめるのが大事だなぁ・・・と、づくづく思った次第です。
—–
・・・ということで。
ここでは「コーヒー本」の受け売りは一切せず、私が見たまま、感じたままを何回かに分けてレポートしてみたいと思います。もし本場エスプレッソをよくご存知の方で「レポートの内容は違う!」等ご意見ございましたら、お手数ですがご一報下さい。

飲む場所によって異なる価格

徒歩圏内に古代遺跡がゴロゴロあるローマ市内。順に遺跡を回ると、自然と小さなバール(Bar)があちこちで目に入ります。エスプレッソは、そのバールと呼ばれる喫茶店で飲めるのですが、まず価格の設定が面白いです。

日本のカフェではカウンターでもテーブルでも同じ価格ですが、バールではテーブル席の方が2~3倍高いのが普通です。
例えばエスプレッソなら、カウンターで飲むと0.8~1ユーロ(90円~110円程度、2010年8月現在)、テーブル席で飲むと2~3ユーロ(220円~330円程度)でした。
はっきりと価格が違うので、カウンターは混んでいてもテーブル席はガラガラ・・・ということも多かったです。
※セルフサービスのバールは、カウンターでもテーブル席でも同じ価格のようです。

ちなみに上記の価格は、小さなデミタスカップの半分くらい、約30ccあたりの価格になります。30ccといえば、2~3口で飲めてしまうほどの量なので、初めて飲む方は「これだけっ?!」と驚かれるかも知れませんね。

ゆっくり飲まないエスプレッソ

カウンターで立ち飲みだと、ゆっくりコーヒータイムを楽しめないのでは?と考えた方もいるのではないでしょうか。
実は、エスプレッソは「ゆっくり・少しずつ」飲むものではありません。なぜなら、ゆっくり飲んでいると、どんどん味が劣化していくからです。

新鮮な豆で入れたエスプレッソは、豊かな香りと香ばしさ+独特のまろやかさを堪能できますが、時間の経過に伴い刻々と不味くなってしまいます。
その劣化具合は、「美味しくない」ではなく「なにこれ不味い!」と言いたくなるレベルです。
新鮮な豆でいれたドリップコーヒーなら冷めても「美味しさが落ちた」程度で済みますので、この違いはかなり大きいと思います。

そういう意味では、日本のカフェのようにテーブル席でエスプレッソを飲むより、バリスタに抽出してもらったものをすぐに飲む・・・というカウンター式の方が、理にかなっているなと思いました。

※バリスタ:バールのカウンターに立ち、注文を受けてエスプレッソ等を作り提供する人。
——–
・・・レポート(2)に続く。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エチオピア産コーヒー豆(モカ)の有機塩素系殺虫剤残留について

有機塩素系殺虫剤が検出

平成20年(2008年)5月9日付けで、エチオピア産コーヒー豆検査命令の実施が発表されました。
これは、基準値を超える有機塩素系殺虫剤γ-BHC(リンデン)、クロルデン、ヘプタクロルが、エチオピア産コーヒー生豆から検出されたため、だそうです。
厚生労働省:輸入食品に対する検査命令の実施について(報道発表資料)

以前、ブラジル産コーヒー豆の残留農薬・ジクロルボスが発覚した時は、ニュースで大変な騒ぎになりましたね。
今回は何故か静かで・・・知らない人の方が多いのでは?と思い、とりあえずお知らせしました。
なお、イエメン産コーヒー豆についても残留農薬が検出された事例があり、モニタリング検査強化が実施されているということです。
※エチオピア産、イエメン産コーヒー豆: モカ(+α)の名で呼ばれているコーヒー豆

不思議な数字

上記報道発表資料で、ちょっと不思議に思ったのは下記の部分。

注7) 日本人の一日当たりのコーヒーの摂取量は、コーヒー豆(生豆)に換算すると2.6gです。

毎日レギュラーコーヒーを1杯飲めば、生豆換算で13gくらい消費してしまいます。日本人の一日当たりの消費量2.6gだとすると・・・0.2杯(5分の1杯)分ですね。
でもカップ1/5杯だけを毎日飲む人は、たぶんとても少ないでしょう。
この中途半端な2.6gという数字は、子供も大人も全部混ぜて平均した、ということでしょうか?そうだとすると、あまり意味の無い数字だなぁ、と思いました。

とりあえず、「体重60kgの人が当該違反のコーヒー豆を毎日飲んでも、健康に及ぼす影響はありません。」とのことです。

一昔前(私がコーヒー豆屋を始めた頃)は、「モカ系は有機栽培じゃなくても、農薬使ってないから大丈夫!」というのが定説でした。しかし今は、そう言えなくなってしまったようですね・・・残念なことです。

<コーヒーの農薬について>
γ-BHC(リンデン)
毒性の強いβ-BHCの残留性が問題となり、現在は多くの国で殺虫剤としての使用が禁止されている。農薬として使用した場合、動物が食物から摂取して、脂肪、肝臓、腎臓などに蓄積する危険がある。
(日本では1971年に失効)


クロルデン・ヘプタクロル
かつて殺虫剤、シロアリ防蟻剤として用いられていたが、現在は製造・輸入が禁止されている。非常に高い残留性を持っており、環境ホルモンとしての疑いがもたれている。
(日本では1968年に失効)

<参考>
モカの時間

きまめや
生豆屋(きまめや)

コーヒーの木に農薬が必要な理由(シェードツリーvs農薬)

シェードツリーとは?

日陰用の樹木のことです。
ご自宅で育てている方はご存知かと思いますが、コーヒーの木は直射日光に当たり続けると葉が日焼けしてしまいます。
そのため、産地の農園ではバナナやマンゴー等の背の高い樹木をコーヒーの木と一緒に植えて、適度な日陰をつくっています。

でもシェードツリーと一緒に植えると、単位面積当たりの収穫量が少なくなり、コーヒーの実の収穫にも大変手間がかかります。
なぜなら、シェードツリーと混在しているため安易に機械を使うことができず、手摘みで収穫することになるからです。

とても手間がかかる作業ですが、農園には様々な樹木が茂り、昆虫や鳥も沢山生息していて自然環境には最適です。
そして、シェードツリーの落ち葉は良質な肥料となり、力強い土壌を作ってくれます。
生豆屋のコーヒー豆達は、シェードツリーと一緒に育てられています。

単一栽培の落とし穴

一方、市場に出回っている多くのコーヒーは、シェードツリーの要らない品種に改良されたものになります。直射日光に強いため、他の木々と一緒に植える必要がありません。
広大な森林を伐採して作られた大規模なプランテーションで単一栽培され、単位面積当たりの収穫量も多いです。
そこでは余計な樹木等はすべて排除されるので、機械を使って容易に収穫でき、手間もかかりません。

しかし、森林伐採により土地は枯れていきました。
単一栽培のため、大量の農薬と化学肥料を投入する必要もでてきました。
その結果、自然環境は破壊され、小さな生物達も激減してしまったのです。
#単一栽培だとコーヒーの木が弱くなるため、病害虫による全滅を避けるために大量の農薬を使用する必要があります。

大量生産を目指した結果、自然環境が破壊され、生産者達の健康をも脅かす状況になっているそうです。
現実は、厳しいですね。

<参考>
コーヒー豆屋を始めた理由(コーヒー嫌いなのに)
店長の紹介
モカの有機塩素系殺虫剤検出
コーヒー豆に住む害虫の秘密

きまめや
生豆屋(きまめや)

コーヒーの消臭効果

コーヒーかす(だしがら)再利用

コーヒーかす
コーヒー抽出後のコーヒーかすは、優れた消臭効果があります。

焙煎した珈琲豆の表面は、多孔質で表面積が広く、臭いを吸着しやすい成分を含むため「消臭効果」が抜群です。
コーヒー抽出後に残る「コーヒーかす」でも十分に効果があるので、良かったらお試し下さい。

作り方は簡単。「コーヒーかす」を乾燥させて、通気性のある布袋・容器に入れれば出来上がり!ジャムなどの空きビンに入れて、フタの代わりに薄い布をかぶせてゴムで止めるのも手軽でおすすめです。
#ゴムの上からリボンを結ぶと、見た目もかわいくなります。

冷蔵庫の消臭、トイレの消臭、車内の消臭、靴箱の消臭などに幅広く利用できます。市販の消臭剤(活性炭など)に劣らない効果が期待できるのが、嬉しいですね。
※「コーヒーかす」にカビが付かないように、しっかり乾燥させるのがポイント。お皿やトレーの上に広げて干すと、早く乾燥します。
※灰皿に入れる場合は、乾燥させないで大丈夫です。消臭だけでなく、残った水分でタバコの火を消すのにも役立ちます。

ここに注意!

消臭といっても、臭いを魔法のように消す訳ではありません。「コーヒーかす」の表面に、臭いを吸着させているだけのことです。
つまり抽出後の「コーヒーかす」だけでなく、抽出前の「コーヒー豆」も臭いを吸着してしまいます。
そのため、「コーヒー豆」を冷蔵庫や冷凍庫のような食品臭が強い場所で保存する場合は、必ず密閉容器に入れるようにして下さい

また、意外と盲点なのが喫煙スペースのあるカフェ・レストランです。以前、嗅覚疲労で同じ系統の臭いは感じにくくなるというお話をしましたね。タバコ臭は喫煙者には感じにくいですが、吸わない人には敏感に感じられます。
不特定多数の方にコーヒーを提供するカフェ・レストランでは、タバコ臭が移らないように保存場所にも注意した方が良いでしょう。

きまめや
生豆屋(きまめや)

コーヒーの香りと嗅覚

なぜ香りが分からない?

ご来店のお客様に、よく「本当に良い香りですね。一日中この香りの中で仕事できるなんて、うらやましいです。」と言われます。
でも実は、私達はあまりコーヒーの香りを分かっていないのでした。
朝10時に店を開けますが、その頃にはバンバン焙煎している最中で店の中はコーヒーの香りだらけ。それなのに、なぜ私達は香りを感じないのでしょう?
それは、嗅覚疲労のためです。

嗅覚疲労(嗅覚順応)

嗅覚は他の感覚に比べると、一番疲労しやすいと言われています。
疲労というのは、ある一種類の臭いを嗅ぎ続けると、数分以内にその臭いに対する感度が落ちることを意味します。つまりコーヒー豆を焙煎すると、店中がコーヒーの香りで満たされて、香りを感じにくくなるという訳です。
また、体調を崩したり、疲れたりしても嗅覚が鈍くなります。満腹の時も、空腹時に比べると格段に嗅覚が鈍くなるのことは、経験的にご存知ですね。
これらを考慮すると、コーヒーの香りを十分堪能するための条件は、次のようになります。

(1)朝(疲れていない時)
(2)空腹時
(3)コーヒーの香りが満たされていない空間

偶然にも条件が整ってました

私は仕事がある日は、朝ご飯を食べません。
さらに仕事(焙煎等)を始める前には、必ずスタッフ達とコーヒーを飲む日課になっています。
つまり(1)~(3)を満たすとっても良い条件で、毎朝コーヒーを飲んでいたことになります。確かに、仕事の前のコーヒーは、味わいをじっくり堪能できて美味しいですね。
朝ご飯を食べる方でも、「朝のコーヒーが、美味しい!」という方は多いのではないでしょうか?
「コーヒーは絶対に食後!」派の方も、たまにはコーヒーを主体にして食前に香りを楽しむのも良いですね。

きまめや
生豆屋(きまめや)