エスプレッソ・レポート(6)「本場エスプレッソの味わいは?」

本場エスプレッソの味わいは・・・

「どうだったの?」ということは、まず日本のカフェ、それもエスプレッソが飲めるシアトル系カフェと比較した方が良いですね。
答えは、当たり前ですが「バールによる」です。
日本でも、美味しいカフェもあれば「あれ?」な味わいのカフェもありますね。それはローマでも全く同じだと思います。
ただ全体的な印象としては、やはり本場の方が一枚上手で「エスプレッソ」そのものの味わいを楽しめる、と感じました。

まず日本では、「ミルクたっぷり入りエスプレッソ」が基本なので、「エスプレッソ」単品で注文する人は少ないですね。店内を見回しても、小さなデミタスカップで「エスプレッソ」を飲んでいる人は殆ど見かけません(少なくとも私は見たことがありません)。

そもそも「エスプレッソ」がメニューにない場合もあり、「エスプレッソできます?」と聞くと「え?!」と動揺する店員さんもいました(某最大手シアトル系カフェにて)。
このことから、カフェの方も滅多に「エスプレッソ」単品で出さないのだろう、ということが想像できます。

一方、ローマのバールでは「コーヒー=エスプレッソ」で、客も当たり前のように「エスプレッソ」を注文します。バール内を見回しても、デミタスカップを持っている人が多く、日本のカフェとは全然違う光景でした。 バリスタさんも「エスプレッソ」の味わいに自信を持って作ってくれるので、安心して楽しむことができました。
その辺の技術や意識の違いが、「一枚上手」という印象を引き出しているのかも知れません。


自分がいれるエスプレッソと比べると?(個人的な感想)

私はコーヒー豆屋なので、どうしても「クレマの下のエスプレッソ液の味わい」を最優先でチェックしてしまいます。さらにルール違反を承知で「砂糖無し」で飲むので、私の意見はあまり参考にならないかも知れません。

ただ、今回の旅行で大収穫があったのは確かです。
それは、手前味噌で大変恐縮ですが「当店の豆でいれたエスプレッソ」より右に出る味わいは無かった、ということです。
本当にずうずうしい発言ですが、これが判ったことが一番の収穫でした。むしろこれを調べるためにイタリアへ行った、といっても過言ではありません。
帰国後、エスプレッソ用の豆をご入り用のお客様に、自信を持ってオススメすることができるようになりました。自信を持てる、ということは私にとってとても大切なことなのです。

エスプレッソの味わいを決める要素は沢山あります。それは高性能のミルだったり、立派なエスプレッソマシーン、抽出技術、厚いクレマ、素敵なデミタスカップ、お店の雰囲気、そしてバリスタさんとの楽しいお話だったり・・・。
でも「クレマの下のエスプレッソ液の味わい」だけは、コーヒー豆次第です。
豆の鮮度(焙煎後・挽いた後の経過時間)と品質が一発で判る「エスプレッソ」。ミルクで誤魔化せないからこそ、違いが分かって魅力的なのかも知れませんね。


大規模店舗の規制に守られて

ところで、「ローマにシアトル系カフェがあったか?」というと、全然ありませんでした。
シアトル系カフェのようなチェーン店は全然見あたらないし、デパート等の大規模店舗もありません。
これは、イタリアでは大規模店舗参入に対する政治的抵抗が非常に強く、小さな店舗が優遇されているから、ということでした。

観光地なのに、見慣れた店が無いなんて・・・と最初はビックリしましたが、少しずつ馴染みの店を開拓していくうちにその方が良いことに気付きました。
だから市場に人が集まるし、小さな雑貨店やバールが繁盛するし、町全体が活気付くのだな、と。
日本の商店街にしてみれば、羨ましい限りですね。
でも、なぜかマクドナルドはありました。どうしてマクドナルドだけOK??

私としては、イタリアのバールは均一化されないまま、個性的なままで居て欲しいなと思います。
世界に一つだけしかないお気に入りのバールって、良いですよね。
日本でも、そんな素敵なカフェが増えて欲しいです。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エスプレッソ・レポート(2)「バールで注文する時」

国民性の違い?

私は、ローマのバールではいつもカウンターで飲んでいました。テーブル席に比べて価格が半分~3分の1で済む上、バリスタさんの動きがよく見えて楽しいからです。
でも、「日本じゃコレは無いだろうなー」と気になった点がありました。

それは、バリスタさん達がとってもマイペースな場合が多かったことです。
具体的にどういう感じかというと・・・
注文を受けても、自分が今までやっていた作業(皿洗いや整理整頓など)を優先し、その間に他のお客さんと楽しそうに話したりしています。
特に急ぐ様子もなく、一通りの作業が終わるまで抽出には取りかかりません。5分以上待たせても(無視しても)平気。つまりお客さんを待たせることについて「全く気にしていない♪」という感じです。一方お客さんの方も、それを全然気にしていない様子でした。

「バリスタの仕事は、お客さんと楽しくおしゃべりすることも含まれる」と予習はしていたものの・・・
最初の頃はあまりの遅さに「このバリスタさん、私の注文すっかり忘れているのでは?!」とよく不安になりました。
帰る頃には「ま。こんなもんかな。」と思えるようになりましたけど。
日本なら「少々お待ち下さい」「お待たせして申し訳ございません」の言葉が出そうな所ですが、この辺は国民性の違いなんだろうな、と納得しました。

イタリアへ行く前に読んだ本では「受注→抽出→出てくるまで50秒、飲んで5秒、お会計5秒で、合計1分間あれば一連の動作が終了!」と書いてあったのですが・・・
実際にカウンターで注文してみると、上記の通り5分以上かかることも多かったです。
単に私が人気のバールや、混んでいるバールを選んで入ってしまったからかも知れませんね。空いているバールなら、もっと早かったかも?

ちなみに一度も注文を忘れられたことは無かったので、カウンターで待つ時は心配無用です。
バリスタさんの気が向けば(順番さえ回ってくれば)すぐに抽出して持ってきてくれるので、ご安心下さい。
#せっかちな方は要注意。郷に入っては郷に従え
・・・まさに “When in Rome do as the Romans do.”ですね。

受注済みの合図

バリスタさんが数人いるバールだと、受注済みの合図が決まっている場合が多いです。
たとえば、お客さんが出したレシートに手で切り込みを入れて合図としたり、ソーサを先に置いて合図としたりします。

そのソーサの合図で、「ガチャン!」とカウンターに勢いよく置かれた時には、かなりビックリしました。
私が入ったバールでは、そこまで凄くなくても作業がやけにダイナミックなお店が多かったのは確かです。
それは、バールに限らず、ジェラテリア(ジェラートのお店)でも同様でした。

大胆かつ素速く抽出してもらったエスプレッソやカップチーノを恐る恐る飲むと・・・これがまた「美味しい!」ことが多かったです。
気のせいかも知れませんが、ダイナミックなお店ほど美味しかったような?豆の回転が早く、新鮮だからでしょうか??
※ちなみに、ジェラートも最高に美味しかったです。

日本に帰ってきて、改めてサービスのきめ細かさ・心遣いに感動しました。
ただ、どっちが良いかは分からないですね。結局日本の場合は、店員さんが沢山気を遣っている訳ですから、お店側のストレスが少ないマイペースの方が精神衛生上良いのかも・・・と思ったりもしました。

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・・・レポート(3)に続く。

きまめや
生豆屋(きまめや)

エスプレッソ・レポート(1)「値段の違いと飲み頃」

先月、はじめてイタリア(ローマ)に行ってきました。
8月後半ということもあり観光客が多い時期でしたが、とりあえずエスプレッソがどういうものか雰囲気はつかめたと思います。そして、日々私達が提供しているコーヒー豆達が「エスプレッソにも最適だった!」と自信を持つこともできました(これが一番の収穫でした)。
やはり、自分の目で見て確かめるのが大事だなぁ・・・と、づくづく思った次第です。
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・・・ということで。
ここでは「コーヒー本」の受け売りは一切せず、私が見たまま、感じたままを何回かに分けてレポートしてみたいと思います。もし本場エスプレッソをよくご存知の方で「レポートの内容は違う!」等ご意見ございましたら、お手数ですがご一報下さい。

飲む場所によって異なる価格

徒歩圏内に古代遺跡がゴロゴロあるローマ市内。順に遺跡を回ると、自然と小さなバール(Bar)があちこちで目に入ります。エスプレッソは、そのバールと呼ばれる喫茶店で飲めるのですが、まず価格の設定が面白いです。

日本のカフェではカウンターでもテーブルでも同じ価格ですが、バールではテーブル席の方が2~3倍高いのが普通です。
例えばエスプレッソなら、カウンターで飲むと0.8~1ユーロ(90円~110円程度、2010年8月現在)、テーブル席で飲むと2~3ユーロ(220円~330円程度)でした。
はっきりと価格が違うので、カウンターは混んでいてもテーブル席はガラガラ・・・ということも多かったです。
※セルフサービスのバールは、カウンターでもテーブル席でも同じ価格のようです。

ちなみに上記の価格は、小さなデミタスカップの半分くらい、約30ccあたりの価格になります。30ccといえば、2~3口で飲めてしまうほどの量なので、初めて飲む方は「これだけっ?!」と驚かれるかも知れませんね。

ゆっくり飲まないエスプレッソ

カウンターで立ち飲みだと、ゆっくりコーヒータイムを楽しめないのでは?と考えた方もいるのではないでしょうか。
実は、エスプレッソは「ゆっくり・少しずつ」飲むものではありません。なぜなら、ゆっくり飲んでいると、どんどん味が劣化していくからです。

新鮮な豆で入れたエスプレッソは、豊かな香りと香ばしさ+独特のまろやかさを堪能できますが、時間の経過に伴い刻々と不味くなってしまいます。
その劣化具合は、「美味しくない」ではなく「なにこれ不味い!」と言いたくなるレベルです。
新鮮な豆でいれたドリップコーヒーなら冷めても「美味しさが落ちた」程度で済みますので、この違いはかなり大きいと思います。

そういう意味では、日本のカフェのようにテーブル席でエスプレッソを飲むより、バリスタに抽出してもらったものをすぐに飲む・・・というカウンター式の方が、理にかなっているなと思いました。

※バリスタ:バールのカウンターに立ち、注文を受けてエスプレッソ等を作り提供する人。
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・・・レポート(2)に続く。

きまめや
生豆屋(きまめや)